2022 Fiscal Year Research-status Report
木材乾燥過程における水分分布の可視化およびAI・シミュレーション技術の開発
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22K14926
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
馬 特 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任講師 (70824316)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水分移動機構 / ひずみおよび割れ / 分光イメージング手法 / X 線CT撮影 / 有限要素法 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度には、ヒノキを実験サンプルとして使用し、合計56個のサンプルを約30×30×30mmの大きさに分割した。サンプルの湿度を制御するために2つの乾燥器を用意した。乾燥器Aは、水によって約95%の高い相対湿度(RH)に調整、乾燥器Bは五酸化二リンによって約10%の低いRHに調整した。28個のサンプルを平衡水分含量に達するまで乾燥器Aに入れた。その後、木材サンプルを乾燥器Bに移し、定期的に取り出して下記の測定を行った。 先ず、各サンプルをX線CTで木材の物理構造、内部の割れ、および密度データを取得し、3Dシミュレーション用モデルを構築した。その後、各木材試料を約5mmの間隔で切断しつつ、その断面を近赤外ハイパースペクトラルイメージング(NIR-HSI)カメラで撮影した。含水率(MC)の計算のため、撮影前後の重量および全乾燥重量を測定した。同じ測定は、乾燥器BからAの順にも行った。測定されたMCとNIRスペクトルの間のキャリブレーションモデルは、偏最小二乗(PLS)回帰分析に基づいて構築した。最後に、MCキャリブレーションモデルを分光画像に適用して、測定された木材サンプルの湿度の可視化を実現できた。 本実験では、「NIR分光法の利点である非破壊測定」の視点を大きく変えて木材乾燥過程における材内の水の3次元空間分布をあえて破壊的な計測によって把握できた。さらに、NIR-HSIでの水の可視化結果に基づいて、水分分布の時間変化と表面温度による水分移動特性をパラメータ化し、非等温乾燥条件下で3次元シミュレーション乾燥過程のモデル化に成功した。さらなる実証実験により、NIR-HSI法が木材乾燥過程における水移動機構のモデル構築のための有力な分析ツールになることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の研究計画である「熱および水分拡散係数から木材乾燥過程のモデル化」を達成するため、木材人工乾燥の実験を繰り返した。近赤外ハイパースペクトラルイメージング法による観測深度は材表層の数mm程度であり、柱材などの材内の水分分布の観察には使えないという現実を直視し、非破壊測定に固執せず、木材試料を乾燥しながら一定の間隔で切断しつつ分光画像の撮影を連続的に行った。その結果、木材乾燥過程における材内の水の3次元空間分布を把握でき、水分分布の時間変化と表面温度による水分移動特性をパラメータ化し、非等温乾燥条件下で3次元シミュレーション乾燥過程のモデル化にも成功した。また、マイクロX線CT装置を活用し、材の変形計測を非接触かつ高い分解能で撮影できた。これにより、次年度の研究計画である「Al・シミュレーション法によるひずみ・割れ予測モデルの構築」のための準備ができたといえる。さらに、上記の研究成果を国学会と国際誌でも発表でき、研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究成果である「水の空間分布と材の変形情報」を元に、有限要素法、AI学習などを組み合わせて材の変形・割れの予測モデルの構築を試みる。また、新しい木材試料を準備し、乾燥応力が原因で実際に生じたひずみ・割れの状況との比較を行い、予測モデルの妥当性を担保する。その後、水分分布および乾燥温度のパラメータを変えながらシミュレーションを繰り返し、乾燥による木材割れの発生メカニズムの解明を図る。さらに、同じ樹種の木材試料をマイクロ波による乾燥や自然乾燥の実験も同時に進める。各乾燥条件での木材の破壊特徴を比較し、人工乾燥と自然乾燥のシミュレーションにおける最適なパラメータの設定の違いなどを検討する。一連の実験により、最適な乾燥スケジュールを自動提案する手法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
2023年8月20-24日に開催される国際学会 (オーストリア・国際近赤外分光会議)における研究発表のための費用を45.0万円計上した。名古屋とオーストリアの往復航空券は35万円、残りは宿泊費などに当てる。今回は、令和4年度の研究成果である「近赤外ハイパースペクトラルイメージング法による木材中おける水分移動機構のモデル化」について発表する。 また、「Al・シミュレーション法によるひずみ・割れ予測モデルの構築」に関する研究成果を国際雑誌に投稿するための英文校閲費用として5.0万円計上した。 差引額である38.5万円は、去年の6月に発注した実験装置の部品(DLPLCRC410EVM)の納期は大幅に遅れてしまったため、繰り越しになったが、「木材表面の3次元形状およびひずみ分布」を計測するための必要な部品であるため、入荷次第発注する予定である。
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Research Products
(2 results)