2022 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative evaluation for the accuracy of spawning event detection of marine fishes by multiple environmental DNA indicator
Project/Area Number |
22K14938
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河合 賢太郎 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (80909101)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 環境DNA / 魚卵 / クロダイ / 産卵生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境DNA調査手法は水を汲むだけと手軽で自然破壊のリスクが少ないため、多方面で生物調査ツールとしての活用が期待されている。本研究の目的は、海産魚類の産卵研究において環境DNAの時空間的な濃度分布情報が産卵イベントの探知に利用できるか定量的に評価することである。 初年度はまず、種苗生産用の飼育クロダイから得られる受精卵の採卵量と水槽内に放出される環境mtDNA濃度との間に相関がみられるかを検証した。クロダイ親魚の飼育水槽水を5月から7月にかけて10日に1回採水し、同時に採卵量を記録した。その結果、クロダイ受精卵の採卵量と環境DNA濃度との間には正の相関がみられた。 フィールド調査では、広島湾におけるクロダイの産卵期に環境mtDNA濃度が増加するか、増加した場合、卵密度と環境mtDNA濃度との間に正の相関がみられるかを確認した。広島湾において、クロダイの産卵期とその前後を含む4月から7月にかけては10日に1回、8月から3月にかけては月に1回の頻度で採水調査を実施した。産卵期には同時に浮性卵を採集し、クロダイ卵の密度を算出した。その結果、産卵期にはクロダイの環境mtDNA濃度が上昇し、クロダイ卵密度と環境mtDNA濃度との間に正の相関がみられた。海産魚類の産卵期を推定するうえで、環境mtDNA濃度の季節変化は有効な情報として利用できる可能性がある。 今後は産卵期だけでなく産卵場でも環境mtDNA濃度が上昇するか調べ、環境mtDNAの時空間的濃度分布が産卵場の特定に有効か評価する。また、魚類の産卵期において環境DNAの由来物質となりうる精液、受精卵、体表粘液、鱗、排泄物について単位量あたりの環境DNA放出量を調べ、精液や受精卵といった産卵由来の物質が放出する環境DNAに特異的な指標を探索する。さらに、その指標が広島湾のクロダイの産卵期や産卵場で上昇するか確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クロダイ飼育水槽水の採水、および、採卵された受精卵量の記録は滞りなく実施された。また、広島湾における環境水の採水、および、クロダイ受精卵の採集も予定通り完遂された。これらのサンプルを使用した実験や解析も問題なく完了し、その結果、飼育下の受精卵量や天然クロダイの受精卵密度の増加とともに環境mtDNA濃度も上昇した。当初立てた仮説通り、環境mtDNA濃度の季節変化は海産魚類の産卵期推定に利用できる可能性を示すことができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度はおおむね申請時通りに研究計画を遂行できたため、次年度も計画に従い研究を実施する。 広島湾におけるクロダイの産卵場で、卵密度の高さに比例して環境mtDNA濃度が高くなるか確認する。また、精液や受精卵といった産卵関連の物質で特有に放出量が多くなる環境DNA指標があるか探索し、その指標が実際に産卵期や産卵場で上昇するか確認する。
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Causes of Carryover |
初年度に購入し使用していた環境DNA実験用試薬の1つが汚染されていることが発覚し、次年度以降の実験に際し購入し直す必要が生じたため。次年度に試薬を購入し直し予定通り調査・実験を行う。
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