2023 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative evaluation for the accuracy of spawning event detection of marine fishes by multiple environmental DNA indicator
Project/Area Number |
22K14938
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河合 賢太郎 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (80909101)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 環境DNA / 魚卵 / クロダイ / 産卵生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境DNA(eDNA)調査手法は水を汲むだけと手軽で自然破壊のリスクが少ないため、多方面で生物調査ツールとしての活用が期待されている。本研究の目的は、海産魚類の産卵研究においてeDNAの時空間的な濃度分布情報が産卵イベントの探知に利用できるか定量的に評価することである。 2年目はまず、魚類の産卵期においてeDNAの由来になりうる組織(精液、受精卵、体表粘液、鱗、排泄物)を対象として、組織によって核とミトコンドリアのeDNA放出量の比(nu/mt比)に違いがあるか調べた。その結果、精液由来のeDNAのnu/mt比は他の組織由来のnu/mt比と比較して有意に高く、精液由来のeDNAの高いnu/mt比はeDNA手法による海産魚類の産卵検出において有効と考えられた。 加えて、初年度に実施したクロダイの種苗生産用水槽における実験を発展させ、飼育クロダイから得られる受精卵の採卵量と水槽内に放出されるeDNAのnu/mt比との間に相関がみられるかを検証した。飼育実験の結果、採卵量が多い日にnu/mt比が高くなる傾向がみられ、ミトコンドリアや核のeDNA放出量を単一の指標として利用するよりも、nu/mt比を指標とすることで、海産魚類の産卵を高精度に検出できることが示唆された。 フィールド研究では、広島湾内に10定点(産卵場4定点、非産卵場6定点)を設置し周年調査を実施した。クロダイの産卵期に産卵場であるカキ養殖場でミトコンドリア環境DNA(mt-eDNA)濃度が増加するか、増加した場合、卵密度とmt-eDNA濃度との間に正の相関がみられるかを確認した。その結果、カキ養殖場では産卵期に有意にmt-eDNA濃度が増加し、同時に採集したクロダイ卵の密度との間には有意な正の相関がみられたことから、mt-eDNAの空間的濃度分布から海産魚類の産卵場を特定できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初に2023年度の実施を予定していた計画はすべて実施できた。eDNAの由来組織における放出eDNAのnu/mt比の比較、および、採卵用水槽における採卵量とeDNAのnu/mt比との相関に関する検証では想定通りの結果が得られ、少なくとも飼育下ではeDNAのnu/mt比から海産魚類の産卵を検出できる可能性を示すことができた。これらの研究成果については学会にてポスター発表を行っている。また、フィールド研究では、海産魚類の産卵期推定だけでなく産卵場の特定においてもmt-eDNA濃度の変動が有効な情報になることが判明したため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、2年目も申請時通りに研究計画を遂行できたため、最終年度である2024年度も計画に従い研究を実施する。 広島湾のクロダイの産卵期および産卵場において、mt-eDNAだけでなくeDNAのnu/mt比が増加するかを調べる。nu/mt比の増加が確認できた場合、同時に採集するクロダイ卵の時空間的密度分布との間に相関があるかを確認する。これまでの解析結果から、mt-eDNA濃度、nu-eDNA濃度、およびeDNAのnu/mt比の時空間的分布が、海産魚類の産卵イベントを検出する指標としてどの程度有効かを評価しまとめる。まとめた成果は学会発表および学術論文として公表する。
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