2022 Fiscal Year Research-status Report
分布南限北上に伴うアマモ場の生物生産構造の変化:多年生群落の一年生化に着目して
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22K14939
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小玉 将史 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (30883269)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アマモ / 藻場 / 葉上動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
アマモ場は生物生産性の高い生態系を形成し、有用水産資源を含む多くの生物の生育場となる。近年、地球温暖化等の影響を受けて、南限域のアマモ場が衰退し、分布南限が徐々に北上している。アマモは基本的に多年生群落を形成するが、分布南限域ではしばしば一年生群落を形成することが知られる。これまでアマモ場の研究は主に多年生群落において展開されてきたが、分布が北上しつつあるアマモ場の生態系機能を正しく理解するうえでは、多年生群落だけでなく一年生アマモ群落の知見も不可欠である。 2022年度には、鹿児島県内の一年生アマモ群落および多年生アマモ群落において、草体の季節消長ならびに生物群集構造の季節変化についての調査を実施した。一年生アマモ群落においては、10月末に草体が発芽し、その後、2022年度末まで草体は大きく生長し続けた。また群落の季節消長にともなって葉上動物群集構造も季節的に大きく変化することが明らかとなった。この後、一年生アマモ群落は次年度夏頃までに枯死することが想定されるため、次年度も引き続き調査を継続する予定である。 一年生群落との比較のために、2021年度まで存在が確認されていた鹿児島県内の多年生アマモ群落において調査を実施した。しかし、2022年10月時点で、調査地の多年生群落が消失していることが確認された。多年生群落があった場所は砂泥底となっていたが、砂泥底内には地下茎が残存していることが確認された。残存した地下茎から次年度以降に群落を復活させるか否か現段階では不明である。南限北上に伴う多年生群落の消失過程において、地下茎の残存による一時的な一年生群落状態を経る可能性があるため、今後の変化を注視する。次年度も引き続き調査を継続するが、多年生群落の消失過程や分布北上過程を捉えられる可能性があるため、調査手法・サンプル集積方法について再検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年生アマモ群落においては、概ね計画通り試料とデータを蓄積することができた。次年度も引き続き調査を継続する予定である。 多年生アマモ群落においては、想定外に群落が消失しつつある状況となった。そのため、一年生-多年生群落間での比較は困難となった。他方、分布南限の北上に伴う多年生群落の消失過程を捉えることができる可能が出てきた。次年度以降の計画を再検討する必要が生じているが、本研究目的を達成する上では、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
一年生群落については、次年度も引き続き毎月の潜水調査を継続し、データを蓄積する予定である。 本研究では一年生アマモ群落と多年生アマモ群落とを比較することを予定していたが、多年生アマモ群落が消失しつつある状況となったため、群落間での比較検討は困難となった。一方、多年生アマモ群落が消失する過程をデータとして捉えることができる可能性が生じてきた。特に消失しつつある多年生群落について、今後どのような変遷をたどるか注視するとともに、調査手法・サンプル集積方法について再検討する予定である。
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Causes of Carryover |
多年生アマモ群落が消失したことに伴って研究計画の修正が必要となった。この金額については、次年度の多年生アマモ群落での調査に使用する予定である。
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