2022 Fiscal Year Research-status Report
放流ホタテガイにおける生息密度・貝同士の衝突がへい死に及ぼす影響の解明
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22K14941
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
永田 淳 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (10881013)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ホタテガイ / 内着物 / 衝突 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、以下の3点に着目することで、内着物形成メカニズムを解明し,内着物と斃死の関係性を明らかにすることである。①貝同士の衝突強度が内着物形成と生残率に及ぼす影響、②飼育密度とそれに伴う貝の接触頻度が、内着物形成と生残率に及ぼす影響、③構成タンパクから推定する内着物の機能。 令和4年度は、ホタテガイどうしの衝突と生残率との関係を解析するとともに、内着物特異なタンパク質を探索した。 ①水流撹拌機を用いて、ホタテガイを衝突させる試験を行ったところ、処理1分で、殻外縁に欠けが認められ、処理5分で、貝の外縁が大きく損傷した。このことから、衝突により、ホタテガイは物理的な影響を受けていることが明らかとなった。処理後の個体を対照区と止水環境下で同居飼育したところ、飼育水の水質が急激に悪化し、全個体が死亡した。衝突の影響による死亡個体の増加が水質の悪化を引き起こし、死亡率の上昇に強く寄与しているものと推察された。このため、令和5年度以降は、海水のかけ流し飼育により、衝突処理後のホタテガイを飼育する必要があると判断した。 ②令和5年以降に実施予定 ③続けて、内着物をSDS-PAGEに供し、銀染色を行ったところ、内着物から多数のタンパク質バンドが認められた。貝柱, 外套膜, エラ, 中腸線も同様にSDS-PAGEに供し、内着物の泳動像と比較したところ、外套膜(52 kDa)及び中腸線(16 kDa)に内着物と共通するタンパク質がそれぞれ認められた。また、内着物においては、他の組織にはその存在が認められない特異タンパク質 (15 kDa,31 kDa,38 kDa)が認められ、こうしたタンパク質が内着物において何らかの役割を担っているものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衝突試験による、ホタテガイ殻の損傷程度を把握できたことに加え、内着物のタンパク質構成を明らかにできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度以降は、海水のかけ流し飼育が可能な函館市国際水産・海洋総合研究センターで試験を実施することとした。現在飼育水槽の設置、試験に用いるホタテガイの導入が完了している。
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Causes of Carryover |
令和4年4月に所属先が変更となり、令和4年度に購入予定であった一部の機材を購入する必要がなくなったため、一部の物品費を次年度に繰り越す。
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