2023 Fiscal Year Research-status Report
中域圏フードシステムの構造的特徴と形成条件に関する研究
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22K14954
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
則藤 孝志 福島大学, 食農学類, 准教授 (80739368)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フードシステム / 中域圏 / 県域 / 地産地消 / 協同組合 / 災害復興 / 食のコミュニティ / 中規模 |
Outline of Annual Research Achievements |
中間年度に当たる2023年度は、前年度から継続して、中域圏フードシステムの形成・発展を担う主体として協同組合セクターに着目し、調査を2件実施した。まず、みやぎ生協の調査では、同生協と宮城県内の酪農生産者との牛乳の産直取引(角田丸森産牛乳)を取り上げ、県内産直(県域の地産地消)の動向や県域レベルで生産者を買い支える仕組みについて考察した。とくに東日本大震災(2011年)、令和元年東日本台風(2019年)、新型コロナウイルス禍(2020年~)、さらには現在の飼料等の価格高騰(2021年~)など、酪農経営(農業経営)のみならずフードシステム全体に影響を及ぼすほどの苦難が続くなかでの県内産直の展開を明らかにすることを目指した。この成果の一部は協同組合専門誌『くらしと協同』にて発表した。もう一つは、郡山食品工業団地協同組合を対象とした調査である。これは中域圏フードシステムの川中を構成する地場の中小食品メーカーによる協同組合の展開を明らかにしようとするものである。みやぎ生協の調査と同様に、震災、原子力災害、水害、コロナ禍への対応に焦点を当て、同組合が大切にする「協力は強力なり」の意味や地域社会との協同について考察した。また中域圏フードシステムの川上と川中とのつながりを強化する方向性や可能性、つまり現状は十分ではない原料調達を通じた福島県農業とのつながりについても聞き取り調査を行った。 上記の協同組合セクターの調査に加え、行政や食品事業者、農業生産者・農協、市民組織など多様な主体がゆるやかに連携したプラットフォームが中域圏フードシステムの強化には重要だと考え、秋田県横手市を事例とする調査も試行的に実施した。この成果の一部は福島大学紀要『地域創造』にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中域圏フードシステムの形成・発展を担う主体として協同組合セクターに着目した現地調査については概ね計画通り進めることができた。また本研究課題のメインではないものの、地域フードシステムを育むためのプラットフォームに関する調査も実施することができた。一方で、理論研究(概念の整理、分析枠組みの構築)については、中域圏フードシステムをめぐる社会動向の整理作業は進めることができたものの、構造や主体間関係を捉える分析視角の検討については十分に進められていないため「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として成果のとりまとめを行う。まずは国際情勢の不安定化による食料安全保障への危機感、円安基調やエネルギー・資材の価格高騰による生産コストの上昇、さらには顕在化する物流問題(2024年問題)などを背景に、地域レベルのフードシステムへの注目が高まっている点を踏まえ、中域圏という領域の位置づけを明確にするとともに、中域圏フードシステムの構造や主体間関係を捉えるための分析視角についてまとめる。そしてこの分析視角を用いて、原子力被災地域におけるタマネギ産地の形成に関する調査を行う。また郡山食品工業団地協同組合の展開を協同組合論の観点から調査した成果を論文にまとめ投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
現地調査や学会出張の計画に一部変更があったことから残金が発生した。この分については次年度の計画の中で、旅費(現地調査、学会報告等)に充てて使用する予定である。
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