2022 Fiscal Year Research-status Report
コロイドの表面特性と氷点下での水の緩和による濃縮の理解に基づく食品の食感設計
Project/Area Number |
22K14972
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小林 りか 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (50780326)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 冷凍食品 / 冷凍貯蔵 / 氷 / カルシウム / 豆腐コロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
食品の多くは,冷凍後の貯蔵時に期間と温度依存的に品質が劣化する.タンパク質を含む加工食品では,冷凍貯蔵が進むほど食品内でタンパク質同士が凝集する,もしくはタンパク質と他の食品成分とが結びつき,硬くボソボソとした食感の食品となることがままある.これら劣化現象のスタートは氷の結晶の生成に伴い食品成分周囲の水がある程度取り去られると共に,食品成分周囲の環境,例えばイオン強度などが変化することに由来すると理解される.これらの変化を最小化するために産業利用的に最も取られる手段は,凍結速度を速めるなど氷をなるべく微結晶とし,貯蔵中のライプニングを最小化するため貯蔵温度を下げる,もしくは添加物等で凍結濃縮部の粘度をあげるなどして水の拡散を遅くする手段である.一方で,冷凍食品の一連の劣化現象の入り口である氷のサイズや成長と,最終的な出口である食品の品質,例えば食感の劣化との間をつなぐ諸現象に関して,科学的に十分に説明できていない点が問題として挙げられる. 本研究では,食品中に存在する油とタンパク質のコロイドから成る豆腐または豆乳をモデルの食品とし,凍結および貯蔵時に生ずる氷の成長,濃縮層内での塩の動き, コロイド同士の凝集と再分散挙動,食感の変化の四つの現象をそれぞれ定量的に評価すると共にそれらがどのように関わっているのか記述することを目指す.今年度は,まずそれぞれの現象が具体的にどのようなイベントが生じているのか検討すると共にそれぞれの個別現象の評価法を決定した.加えて,それぞれ4つの現象に強く影響を及ぼすパラメーターとして,凍結時の冷却速度があると知られているため,本課題で採用する凍結速度条件を決定するための実験検討も併せて行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,まずそれぞれの現象が具体的にどのようなイベントが生じているのか検討すると共にそれぞれの個別現象の評価法を決定した.豆腐と豆乳を用いて,氷の24時間未満の短時間での貯蔵時の変化をDSC測定から,濃縮層内での塩の動きを組織切片の偏光観察から行った。また,豆腐や豆乳を凍結貯蔵した後、凍結乾燥した試料を一定のエネルギーで粉砕し、それらの粒径評価とFT-IR測定から,コロイド同士の凝集と再分散挙動の評価を試みた。 それらの結果より,貯蔵中氷はDSCの融解エンタルピーを増す,すなわち凍結水量が増すこと,カルシウム塩の結晶と予想される像が貯蔵時間の増加と共に出現してくること,が分かった。加えて,油とタンパク質が積層した状態のコロイドから成る豆腐コロイドは凍結および貯蔵によって一部油とタンパク質それぞれに分離していく傾向があることも分かった。またこれらの分離挙動は添加するカルシウム塩濃度依存的であることも確認できた。加えて,凍結時の冷却速度がそれぞれ4つの現象に強く影響を及ぼすパラメーターであるため,本課題で採用する凍結速度条件を決定するための予備検討も併せて行った.その結果,0.2℃/minより急速な凍結の場合は上記の現象を進みにくくさせる効果があり,速度の影響は連続的ではなくある臨界値を持つように見えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は豆腐や豆乳を凍結貯蔵する際の現象の把握に主に費やした。そこで次年度は、本年度確認できた現象をそれぞれ経時的に定量することを目指す。この際に添加するCaの量をパラメーターとし検討する。特に偏光顕微鏡観察で確認できた豆腐組織内の結晶が塩結晶であるか、またその結晶量に関してX線回折,熱測定を用いて評価する。 また凍結速度が影響する臨界値を持つ可能性に関しては,詳しく定量的に評価を行う。すなわち,凍結速度を段階的に細かく変化させていった後の貯蔵中の氷の結晶化量の変化,融解エンタルピーの温度依存的分布に現れると考えられる氷のサイズの効果,またそれらから引きこされると考えられる添加塩由来のカルシウムの分布をSEM-EDXなどを用いて明らかにしていく予定である。
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