2022 Fiscal Year Research-status Report
乳房炎対策に資する短鎖脂肪酸の乳腺防御機構に対する作用機序の解明
Project/Area Number |
22K14983
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
津上 優作 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (10911563)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 乳腺 / 抗菌因子 / タイトジャンクション / 短鎖脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳腺には侵入した病原体に対する感染防御機構として、密接な上皮細胞層とタイトジャンクション(TJ)形成による物理的バリアと抗菌因子産生による化学的バリアが存在する。酢酸や酪酸などの短鎖脂肪酸は、腸管におけるTJバリア機能や抗菌因子産生を増強することが報告されているが、乳腺での効果は明らかになっていない。 本研究では、まず、ヤギ乳腺上皮細胞を用いた乳分泌モデルを作製し、酢酸と酪酸が抗菌因子産生に及ぼす影響を検証した。泌乳期トカラヤギ乳房から乳腺を採取し、コラゲナーゼ処理などにより乳腺上皮細胞を単離した。続いて、培養プレートに乳腺上皮細胞を播種し、コンフルエントまで培養した。その後、泌乳ホルモンとともに5 mM酢酸ナトリウムもしくは酪酸ナトリウム存在下で5日間培養を行った。抗菌因子の産生量と発現量をELISAおよび定量PCRで測定したところ、酪酸処理群でβ-defensin-1やS100A7への有意な影響が確認され、酢酸処理群ではいずれの抗菌因子にも顕著な影響は確認されなかった。 続いて、泌乳期トカラヤギ乳房内へ5 mM酢酸ナトリウムもしくは酪酸ナトリウムを注入し、乳中抗菌因子濃度への影響を生体レベルで検証した。酪酸処理群では、培養モデル同様にβ-defensin-1とS100A7濃度の増加が確認された。また、酢酸処理群でも好中球由来の抗菌因子であるcathelicidin-2濃度の増加が確認され、短鎖脂肪酸の種類依存的な抗菌因子産生の増強機構が明らかになった。 TJバリア機能への影響を調べるため、コラーゲンゲルを被覆したカルチャーインサートを用いた培養を行った。インサート上層もしくは下層の培地に5 mM酢酸ナトリウムもしくは酪酸ナトリウムを添加し、経上皮電気抵抗値やFITC透過性によりバリア機能を評価したところ、その影響も短鎖脂肪酸の種類および方向性で異なることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヤギ乳腺において、短鎖脂肪酸が種類依存的に抗菌因子産生やTJバリア機能へ影響していることが明らかになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度からは研究対象を乳牛に発展させ、血中および乳中の短鎖脂肪酸組成と乳腺TJバリア機能および乳中抗菌因子濃度の相関関係を検証する予定である。
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Research Products
(3 results)