2022 Fiscal Year Research-status Report
野草地放牧によるヒツジの肥育技術確立にむけた草地条件と肥育成績の関連性の解析
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22K14985
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
浅野 桂吾 石川県立大学, 生物資源環境学部, 講師 (00805129)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 野草地放牧 / ヒツジ / 肥育成績 / 植生 / 草地管理 / 養分摂取量 |
Outline of Annual Research Achievements |
野草地(24a)で、春季、夏季、秋季にそれぞれ9日間の放牧試験を行った。牧区は植生の違いから短草型草地と長草型草地の2区に分けられ、各区で野草の成熟度が異なる2区を設けた。野草の成熟度は、掃除刈りから放牧までの野草の再生期間を3週間設けた草地を低成熟区、5週間設けた草地を高成熟区とした。サフォーク種の維持期成雌羊16頭を用い、各区に4頭ずつ割り当てた。補助飼料として飼料米を体重の0.8%に相当する給与量で給与し、放牧中は牧区に自生している野草を自由採食させた。採食草および部分糞のn-アルカン含量をガスクロマトグラフィーで測定するアルカン法によって、採食草種組成および養分摂取量をした。 日増体量は、季節間において夏季と秋季で有意に高く、春季では高成熟区で有意に高かった。採食野草の粗タンパク質(CP)含量は、成熟度間において春季で低成熟区、夏季と秋季で高成熟区が有意に高かった。採食野草の可消化養分総量(TDN)含量は、試験区間において春季で低成熟区、夏季で高成熟区、秋季で長草型・高成熟区が有意に高かった。CP、TDN含量ともに、季節間においては秋季、春季、夏季の順で有意に高かった。TDN/CP比は、季節間において春季、夏季、秋季の順で有意に高く、試験区間において春季では高成熟区、夏季では長草型・高成熟区、秋季では長草型・低成熟区で有意に高かった。以上のことから、野草の成熟度管理はヒツジの養分摂取量及び摂取バランスを改善し、増体成績を向上するとともに、草地植生に関わらず野草の再生期間を5週間に調節することでその効果は高まることが示唆された。また、季節間で上記の草地管理の効果は異なることも示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は植生および野草成熟度を異にした野草地牧区を4牧区設置し、春・夏・秋の季節ごとに放牧肥育し、その間の植生・採食草(種および重量)・栄養摂取量を測定し、各季節内の牧区間で比較することで、植生や野草の成熟度といった草地条件と増体成績の関係を調査をすることを目的とした。実験の実施、データの収集・解析は遂行され、目的となる成果は達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は野草地放牧における放牧圧と増体成績の関係を調査するため、放牧圧を3水準(軽・中・重牧)にした放牧飼養試験を実施する。育成羊15頭を放牧し、それぞれの放牧圧における牧区の草量、採食草種、増体、血液性状の変化を分析する。試験は夏季1ヶ月、秋季1ヶ月の計2回を繰り返し、季節間の変化も分析する。これらから増体成績の優れた放牧圧を明らかにするとともに、各放牧圧の放牧可能期間も検討する。 また、令和4年度の研究結果と統合し、因子分析および重回帰分析を用いて草地条件による採食草種、栄養摂取量、肥育成績の予測モデルを構築し、草地条件から摂取栄養や増体成績を予測可能にする。各試験の牧区間比較からは、肥育成績を高めるための野草地の選択、草地管理・放牧管理手法を明らかにすることで、野草地放牧における植生・成熟度管理といった草地管理技術および適切な放牧圧などの放牧管理技術を提言する。
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Causes of Carryover |
令和4年度の研究にかかる必要経費を全て使用した結果、極めて少額の残余が発生した。これらは次年度の物品費に充てる。
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