2022 Fiscal Year Research-status Report
Does ionizing radiation induce metastasis in canine melanoma?
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22K14993
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
根本 有希 山口大学, 共同獣医学部, 助教 (50790705)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 放射線 / イヌ / 悪性黒色腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
イヌの悪性黒色腫は急速な腫瘍増大と早期に起こる遠隔転移により非常に予後が悪い。放射線治療により腫瘍を制御しても腫瘍の転移が生存率の低下を招く。そこで転移の制御を目指す放射線治療が必要とされる。しかし腫瘍への放射線照射が肺転移を亢進するか抑制するかは不明である。そこで本研究では放射線照射がイヌ悪性黒色腫の転移能にどのように影響を与えるかという問いを解決するため細胞株にX線照射を行い、その細胞の運動能や転移関連因子の変化を検討することとした。 初年度は4つのイヌ悪性黒色腫細胞株を用いた実験を行った。まず最初にイヌの悪性黒色腫の細胞株を用いた放射線感受性を調べた。放射線感受性にはトリパンブルーを用いた色素排出試験と、コロニー形成試験を行った。色素排出試験では、2, 8, 10 Gyを照射し、照射線量が増加すると有意に生細胞数は減少したが、高線量であっても照射後1, 3, 5日後で細胞の増殖は認められた。コロニー形成法では、コロニーを形成した3つの細胞株について検討を行った。全ての細胞で0, 2, 4, 6, 8 Gy照射時において有意にコロニー数は減少し、そのうち1つの細胞株で他の2つの細胞株よりも放射線抵抗性を示すものがあった。次に細胞の照射後の運動能を検討するためにInvasion assayとWound healing assayを行った。Invasion assayでは複数回の実験において結果が安定せず、現在も細胞数を含め、条件を検討中である。Wound healing assayでは照射後12, 24, 36, 48時間後においてどの細胞株においても有意な運動能を認めたが、それらは照射線量の違いにおいて有意な変化が見られず異なる照射線量において運動能の違いは認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年秋より実験に用いるX線照射装置の変更があり、それに伴いそれまでに行なっていた実験のやり直しを行なっていたことが一番の要因であると考えられる。またInvasion assayにおいては実験結果が安定せず、条件検討に時間を必要としている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在検討中のInvasion assayを完成させ、予測した結果が見出せなくても、転移関連因子に違いがあることも考えられるため、X線照射の前後において転移関連因子の活性化や発現についての実験を進める。Wound healing assayではそれぞれの細胞株では照射線量の違いにより運動能の有意な違いを認められなかった。しかしコロニー形成試験では、X線抵抗性を示した1細胞株が明らかになったため、運動能力だけではなく、放射線感受性の違いにも注目して実験を認める。 それぞれの細胞株をこれまでの実験と同様に照射を行い、細胞上清と細胞を回収し、転移関連因子を解析する。細胞上清についてはEMT関連因子やタンパク質分解酵素であるMMPの検出を試みる。一方回収した細胞はTGF-βの受容体の発現と活性化、細胞接着関連物質であるインテグリン、上皮系細胞マーカーや間葉系細胞マーカーの上昇が起きているかについて、ウェスタンブロティングを用いて調べる。細胞株での違い、照射線量の違いについて比較を行い、特に発現が上昇した転移因子からそれに関わる経路を予測する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は細胞の転移関連因子の検討まで実験が進まず、抗体の購入などの必要がなかったことが要因であると考えられる。繰越した金額は、転写関連因子の抗体購入にあてる予定である。
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