2023 Fiscal Year Research-status Report
超音波エラストグラフィを用いた非侵襲的右心房圧推定法の確立
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22K15014
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
田村 昌大 酪農学園大学, 獣医学群, 講師 (30894836)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Shear wave elastography / 肝硬度 / 右心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究では、実験犬を利用し可逆性の急性心不全モデルを作成し、右心房圧推定におけるshear wave elastographyの有用性を明らかにした(Tamura et al. JVIM 2023)。そして申請時の予定では、次の研究として慢性心不全モデルを作出して、慢性期の有用性を検討する予定であったが、昨今の情勢および本学の動物倫理規定の変更により、犬を用いての不可逆性モデルの作出が困難となった。そのため、実際に附属動物医療センターに来院した心疾患を有する犬を用いて検討を行った。まず65頭の心臓病を有する犬を前向きに組み入れて、我々が以前報告した方法でshear wave elastographyを用いて右肋間から肝硬度を測定した。さらに右心房圧増加の指標として後大静脈の短軸/長軸比も算出した。臨床的に右心不全徴候の有無で2群に分けて、統計学的に解析した。臨床的に右心不全があると判断された犬では、肝硬度と後大静脈の短軸/長軸比が有意に高値を示した。さらに右心不全の検出に対するROC解析では、肝硬度は後大静脈の短軸/長軸比よりもAUCは高値であった(AUC=0.992 vs 0.966)。可逆性の急性心不全モデルと同様に、肝硬度の上昇は心疾患に伴う右心不全に関連した肝うっ血を強く反映している可能性が強く示唆された。Shear wave elastographyは心疾患罹患犬の鬱血性右心不全を予測するのに有用である可能性が示唆された。本研究成果は、フィラデルフィアで開催された2023年American College of Veterinary Internal Medicineで発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初慢性心不全モデル作出が困難となり実験の遅れが予想されたが、附属動物医療センターに来院した罹患犬を用いた臨床研究を行う事で、順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究でこれまで用いていたShear wave elastographyによる肝硬度は鬱血性右心不全で上昇し、従来指標に比べて鬱血性右心不全の検出に優れている可能性が研究成果で示唆された。この肝硬度の増加は、鬱血性右心不全に伴う肝臓の粘性の増加に起因している可能性が高い。組織は粘弾性であり、組織の硬度は粘性と弾性に左右される。これまで用いていたShear wave elastographyは、この組織の弾性および粘性の両方を合算した形で計測している。しかし、近年新しく登場したDispersion imagingは理論的に粘性のみを評価することができるツールで有り、肝うっ血のような粘性が主に上昇する病態では粘性および弾性を合算して評価するShear wave elastographyより、粘性のみを評価出来るDispersion imagingの方がより鋭敏にうっ血肝を検出できる可能性がある。現在、Dispersion imagingの獣医療への応用および心疾患罹患犬を用いた鬱血性右心不全の予測方法としての有用性を検討している。
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Causes of Carryover |
犬購入費、維持費が必要無くなったため本年度の支出が抑えられた。一方で、次年度は国際学会に参加予定であり、かつ円安の影響を受けて、本研究申請時よりも旅費分が高くなると想定している。
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