2022 Fiscal Year Research-status Report
卵巣ステロイドホルモンによる非生殖器官の組織リモデリングメカニズム
Project/Area Number |
22K15023
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 芳彦 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (10919145)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 卵巣ステロイドホルモン / 皮膚 / 組織リモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣ステロイドホルモンであるエストラジオール17βやプロジェステロンは、排卵周期の進行や妊娠に伴い分泌動態が変化し、それによって生殖器官の機能を調節することがよく知られている。これらのホルモンは、子宮内膜や卵管においては組織リモデリングにも役割を果たすことが知られ、このプロセスは受精や胎子の発育に最適な環境を提供するために必須のものである。それではこれら卵巣ステロイドホルモンは、非生殖器官の機能には影響を及ぼすであろうか。本研究プロジェクトでは、妊娠期の皮膚リモデリングに光を当てた。妊娠時において、胎子の成長によって腹部に張力がかかり、皮膚組織が押し広げられる。この際に皮膚表皮は、細胞自体が伸びているわけではなく、毛包間表皮に KRT14+/TBX3+細胞を起点とした細胞増殖クラスターを形成することで皮膚の表面積を増加させることが近年の研究により明らかとなった。本研究プロジェクトにおいて、single-cell RNA-seq解析技術と、その結果を免疫蛍光染色やFISH法によって validation することにより、卵巣ステロイドホルモンの血中濃度がダイナミックに変化する妊娠期において、これまでに定義されたことのない細胞群が腹部真皮組織に出現することを明らかにした。またこの細胞群の一部には卵巣ステロイドホルモン受容体が発現すること、ならびに卵巣ステロイドホルモン受容体下流のシグナルが活性化していることが明らかとなった。この細胞群において卵巣ステロイドホルモン受容体の機能を探るため、当該細胞群において卵巣ステロイドホルモン受容体をコンディショナルノックアウトすることのできる遺伝子組み換えマウスを作出し、次年度初めより実験が実施できる状況となった。また、当該細胞群の体外培養技術についても作出をすることができ、さらなる研究の伸展のために使用できる状況となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妊娠期特異的な細胞が出現することの発見、ならびにその細胞群の一部において卵巣ステロイドホルモン受容体下流シグナルが活性化していることが明らかとなった等、科学的に新規である事象を明らかにできたことから、研究プロジェクトが順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、妊娠期特異的な細胞群のうち卵巣ステロイドホルモン受容体下流シグナルが活性化されているものの生物学的機能を明らかにするため、遺伝子組み換え動物技術を使用し当該細胞群を ablation したり、卵巣ステロイドホルモン受容体をコンディショナルノックアウトするなどしてさらなる新規知見を得ることを狙う。
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Causes of Carryover |
当初見込みより少数のサンプル数で十分な新規知見を明らかにすることができたため、消耗品費が節約でき、次年度に幾分か繰り越すことができた。また技術補佐員雇用のための人件費を使用しなかったことも一因である。次年度使用額については、技術補佐員雇用経費の上積用として主に使用したいと考えている。
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