2022 Fiscal Year Research-status Report
ノンカノニカルTF IIDによる生殖細胞特異的な転写活性化機構の解明
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22K15039
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
島田 龍輝 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (10882798)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生殖細胞 / 基本転写因子 / 減数分裂 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
減数分裂期の細胞では、基本転写因子TF IIDの構成因子TFA7のノンカノニカル型パラログであるTaf7lとTaf7l2の2種が発現している。ノンカノニカル型のTaf7l/Taf7l2は減数分裂期の細胞に発現が誘導されることが示唆されていたことから、生殖細胞はTF IID構成因子をノンカノニカル型に変えることで、減数分裂期の生殖細胞に特徴的な遺伝子発現を駆動していると考えられた。 TAF7/TAF7L/TAF7L2それぞれのタンパク質の機能とその違いを明らかにするために、まずそれぞれのタンパク質に対する抗体を作成し、発現パターンを解析した。その結果、精巣において、TAF7は精原細胞で強く発現している一方で、TAF7Lは減数分裂開始時期の細胞に、TAF7L2は減数分裂進行中の細胞に特異的に発現していることがわかった。この結果から、TAF7/TAF7L/TAF7L2はそれぞれ異なる細胞で機能しており、その発現の違いによって細胞種に特有の遺伝子発現パターンが誘導されていることが示唆される。 TAF7ファミリーは単独で機能するわけではなく、結合因子を介して転写を制御している。そのため機能の違いを明らかにするためには、それぞれの結合因子を明らかにする必要がある。この目的のために、精巣を用いてTAF7LとTAF7L2に対する免疫沈降と質量分析を行い、結合因子の網羅的な探索を行った。その結果、TAF7LとTAF7L2は異なるクロマチンリモデラーと結合していることが明らかになった。この結果から、TAF7LとTAF7L2は異なる分子機構で標的遺伝子の転写を制御していると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TAF7Lの欠損マウス(knock-out:KO)を作成し、表現型解析を進める予定であったが、TAF7LがX染色体に存在していることが影響してか、これまでにKOマウスの樹立に成功していない。 これまではCRISPR/Cas9を利用したKOマウスの作成を目指していたが、この方法では、オスが不妊になることが予想され、メスマウスを介してした次世代を得ることができず、効率がよくなかった。そこで現在方針を変更し、loxp-Creの系を利用した条件付きKO(conditional-KO:cKO)マウスの作成を目指している。この方針により、遺伝子改変が成功したオス・メス双方から次世代を得ることができると期待している。今後は早い段階でTaf7l-cKOマウスの作成を完了し、TAF7Lの機能解析を大きく進展させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
TAF7/TAF7L/TAF7L2は基本転写因子のTF IIDの構成因子であり、DNAに結合して、標的遺伝子の発現を制御することで、細胞特異的な遺伝子発現を誘導していると考えられる。従って、それぞれの因子の標的遺伝子を同定することは必須の課題である。それぞれの因子が発現している細胞集団は精巣内で限られているため、少数細胞で標的遺伝子の同定を行うことのできるCUT&TAGやCUT&RUNといった技術を用いて細胞内での機能の違いを比較・検証する。
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