2022 Fiscal Year Research-status Report
脂質-タンパク質相互作用に着目した新規オートファジー因子の探索と機能解析
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22K15045
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小島 和華 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 日本学術振興会特別研究員 (10923667)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オートファジ― / 脂質膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーは、細胞内の恒常性維持に不可欠な分解システムであり、分解標的物を取り囲むための隔離膜という脂質二重膜の出現を特徴とする。この膜の形成は、他所からの脂質の供給・修飾といった細胞内脂質のダイナミックな動きを伴い、そこには未知の因子を含めた多数のタンパク質が関与する。 本研究では、オートファジーにおける「タンパク質により制御される脂質の動き」および「脂質により制御されるタンパク質の動き」に焦点をあて、哺乳類における新規オートファジー関連因子の探索と機能解析を行っている。隔離膜が伸長するためには、材料となる脂質が他所から供給される必要があり、また、膜上のPI3PやPI4Pなどの特定の脂質はオートファジーの進行に重要である。本研究は、オートファジー膜への脂質輸送の制御、および、特定の脂質の存在がカスケード進行のきっかけとなるメカニズムを明らかにしたい。 本年度は、申請者の先行研究で得られた質量分析データをもとに、脂質結合オートファジータンパク質を探索した。その結果、複数の候補因子が得られ、哺乳類培養細胞を用いた細胞内局在解析によって、オートファジー誘導に伴って隔離膜に集積することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は先行研究において、損傷したミトコンドリア選択的なオートファジー(マイトファジー)の誘導系を実験条件として用いることで、非選択的なオートファジー誘導時よりも劇的な隔離膜形成を引き起こすことができることを利用し、質量分析によって新規オートファジー関連因子のスクリーニングを行った。本年度はそのデータを再解析し、既に報告された文献・データベースの他、ドメイン予測ツールを利用して「脂質と相互作用するタンパク質」という基準で新たなオートファジー関連タンパク質の候補の絞り込みを行った。その結果、複数の候補因子が得られた。それらの因子について哺乳類培養細胞cDNAライブラリーからの遺伝子クローニングを行い、実験に用いるための遺伝子発現コンストラクトを作製した。哺乳類培養細胞中に発現させ、高性能共焦点顕微鏡によりオートファジー誘導下での挙動を観察したところ、隔離膜と共局在することを見出した。これらの候補因子はどれもこれまでオートファジー関連の機能が報告されていないタンパク質であるため、脂質結合に焦点を当てた新規オートファジー関連因子の探索を目的とする本研究にとって、順調な進捗を得られたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者が同定した脂質結合および膜結合が示唆される新規オートファジー関連タンパク質について、主に哺乳類培養細胞を用いた実験系により分子機能を解析していく。 まず、タンパク質構造予測ツールであるAlphaFold2を用いて立体構造的特徴を調べ、部分欠損変異体を作製してオートファジーに伴う隔離膜上への集積に必要なドメイン領域の同定を行う。また、大腸菌・昆虫培養細胞・哺乳類培養細胞からのタンパク質精製を試み、申請者が先行研究において実験系を確立した、人工的に作製した脂質膜リポソームとの試験管内結合実験に用いる。これらの解析により、同定したタンパク質がどのような種類の脂質とどのような様式で結合するか検討し、その脂質-タンパク質間の結合がオートファジーカスケードの進行において担う役割を明らかにする。
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