2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K15053
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 杏子 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (10795701)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キネシン / KIF5 / 微小管 / 筋萎縮性側索硬化症 / ALS |
Outline of Annual Research Achievements |
キネシンモーターの一つであるKIF5Aの遺伝子変異は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因となる。遺伝子変異の多くはKIF5Aのexon27周辺配列に生じ、多くがスプライシング異常によりエクソン27のスキップを引き起こす。エクソン27の欠失は、全1032アミノ酸から成るKIF5AのうちGly998をコードする領域でのフレームシフトを起こす。変異型KIF5AではAsn999以降の34アミノ酸が、39アミノ酸からなる別の配列に置き換わることとなる。本研究ではこの変異型KIF5Aの解析を行ってきた。ALS変異型KIF5Aの生化学的解析を行うため、KIF5Aタンパク質の精製を行った。C末端に蛍光タンパク質およびアフィニティー精製のためのタグ配列を付加したKIF5AをBac to Bacシステムを用いて昆虫細胞Sf9で発現した。細胞を可溶化後、アフィニティー精製を行ったのちゲル濾過クロマトグラフィーにより解析した。野生型および変異型KIF5Aの総アミノ酸数はほとんど変わらないのにもかかわらず、ゲル濾過クロマトグラフィーにおいて変異型KIF5Aは野生型KIF5Aの二倍以上に相当する高分子量側に溶出した。またカラムの排除限界に多くのタンパク質が回収された。また得られたタンパク質を室温でインキュベートし経時的に濁度を測定したところ、野生型KIF5Aは24時間後においても殆ど濁度の増加が見られないのに対し、変異型KIF5Aは大幅な濁度の上昇が見られた。これらの結果からALS変異型KIF5Aにおいてはタンパク質の凝集が起こると考えられる。またこの凝集形成は精製したKIF5Aを用いた実験で観察されたことから、他のタンパク質を介さずKIF5Aタンパク質自体の性質が変化することで凝集していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
通常、凝集形成を起こすタンパク質は可溶性が低くタンパク質精製は難航することが多い。当該タンパク質は凝集性を有するものの可溶性画分に一定量を回収することが出来、かつ分解産物の少ないことから予想より調製が円滑に進行した。そのため研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ALS変異がKIF5Aの二重自己阻害に及ぼす影響を解析するため自己阻害に重要な役割を果たすキネシン軽鎖を結合した四量体KIF5Aを精製し解析を進める。四量体KIF5Aにおける運動能の変化を全反射顕微鏡による一分子観察で解析することで、ALS変異がKIF5Aの自己阻害を破綻させる分子メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(7 results)