2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞質液滴Yb bodyにおけるShu排除の解明と液滴特異的プロテオームへの応用
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22K15056
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平形 樹生 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40844791)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | piRNA / Shutdown / Yb body / ミトコンドリア / 液-液相分離 / FKBP6 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の生殖組織特異的に発現する小分子RNAであるpiRNAは、Piwiタンパク質と複合体を作りトランスポゾンの発現を抑制する。piRNA経路に関わる遺伝子としてFKBP6が知られ、そのショウジョウバエオルソログShutdown(Shu)も卵巣体細胞(OSC)におけるpiRNA生合成に必須である。OSCのpiRNA生合成経路では、ShuとPiwiが結合し、非膜系オルガネラYb bodyに移行する。ShuはPiwiをYb bodyにリクルートするものの自身はYb bodyに留まらずに離脱する。Yb body内でRNAと結合したPiwiは、Yb bodyを離れてミトコンドリアへ移行して成熟化を受ける。本研究では、ShuがYb bodyから排除される機構、および排除される生理的意義を解明することを目指す。また、新規piRNA関連タンパク質の同定に向けて、排除機構を利用したYb body特異的タンパク質標識技術の確立も目指す。 本年度はまず、Shu同士の相互作用を人為的に誘導するとShuがYb bodyに蓄積することを明らかにした。この時のOSCの表現型を解析することで、ShuのYb bodyからの離脱が、Piwiのミトコンドリア移行に必須であることを明らかにした。また、本研究の過程でShuタンパク質の量をpiRNA生合成経路によって負に制御するネガティブフィードバック経路が存在することが明らかになった。さらに、排除機構の解明と並行して免疫沈降法による新規因子の探索にも取り組み、Yb bodyと隣接して局在するトランスポゾン抑制因子の発見に至った。タンパク質が顆粒から出ることの意義に迫る先行研究は乏しく、piRNA経路におけるネガティブフィードバック経路の存在は初の発見と考えられる。また、Shu同士の反発が顆粒からの離脱をもたらしているという新規性の高い作業仮説を得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に含まれていた、Shu排除の生理的意義についての解析が進展したほか、Shu排除の機構についても検証可能な作業仮説を得ることができた。さらに研究の過程で、piRNA生合成を制御するネガティブフィードバック経路の存在が明らかになり、予期せぬ成果が得られている。Shu排除機構を応用したタンパク質標識技術についても、その基盤となる排除機構の解析が進んでいるため当初計画通り遂行可能と考えられるが、並行して行った別手法での解析によって有力な新規因子が同定されており、計画以上の進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
Shu同士の反発が顆粒からの離脱をもたらしている可能性を検証するため、精製Shuタンパク質を用いたin vitro解析を行う。また、反発を妨げる変異体の作製と表現型の解析も行う。以上の成果を論文として発表することを計画している。さらに、新規因子の機能解析や、フィードバック制御の機構の解明にも取り組む。
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