2022 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラへの脂質分配と細胞分裂を調和させる分子機構の解明
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22K15060
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土谷 正樹 京都大学, 工学研究科, 助教 (00837338)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ホスファチジルコリン / コリン / 細胞増殖 / 細胞分裂 / 細胞死 / オルガネラ / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
リン脂質ホスファチジルコリン(PC)は哺乳類細胞において主要な膜構成脂質であり、主には小胞体・ゴルジ体で生合成され、ミトコンドリアや細胞膜などの他のオルガネラ膜に運ばれる。細胞増殖・分裂の過程でオルガネラ膜にPCが正しく分配される機構を明らかにするために、本年度は、クリックケミストリーとフローサイトメトリーを利用して、ミトコンドリアへのPC輸送に関するスクリーニング検討を実施した。アジド基を導入したコリンを出発物質として生合成されるアジド含有PCの細胞内分布について、小胞体・ゴルジ体について蛍光標識し、同時に、別の蛍光波長で、ミトコンドリアについて標識した細胞について検討した。ゲノムスケールCRISPR-KOライブラリーを発現するK562細胞のプールから、小胞体・ゴルジ体のPC量に対してミトコンドリアPC量が減少した変異細胞をフローサイトメトリーにより選抜した。次世代シーケンサーによる解析および個別の遺伝子のCRISPR-KOの再解析を通じて、スクリーニングの表現型を示す遺伝子を同定した。解析の結果、リン脂質を細胞内で輸送することが知られるSTARD7が得られ、STARD7を欠損する細胞では、小胞体・ゴルジ体のPC量に対してミトコンドリアPC量が顕著に減少していることを実際に検出した。また、これと同様の表現型を示すものとして、PELOも同定した。PELOはミトファジーに関わることが知られており、さらにPELO欠損K562細胞は細胞増殖に遅延が認められた。この事より、ミトコンドリアへのPC分配と細胞増殖のバランス維持にPELOが関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリアのホスファチジルコリンに焦点を当てたスクリーニング系で、既によく知られているミトコンドリア局在型PC輸送タンパク質STARD7が精度よく得られたことから、実験系の構築が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
リン脂質PCの生合成・オルガネラ間輸送をより正確に評価するために、培地に含まれるコリン・PCを精密に調節することを検討する。また、PCと他の生体分子の代謝バランスに関する知見を得るために、PC合成とタンパク質合成の同時多色フローサイトメトリー解析系構築の検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、スクリーニングの立ち上げ検討が順調に進み、それに関わる消耗品の計上に変更が生じたため。翌年度に向けて、計画を修正すると共に、新たに検討が必要になった培地組成を詳細に実施するために当該予算を活用する。
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Research Products
(2 results)