2023 Fiscal Year Research-status Report
スフィンゴ糖脂質合成酵素の小胞体搬出機構:ERESにおける選別・濃縮機構の解明
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22K15063
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
宍戸 史 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (60601284)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 糖転移酵素 / 糖脂質 / 小胞体搬出 |
Outline of Annual Research Achievements |
スフィンゴ糖脂質合成酵素は主にゴルジ体に局在し、多様な種類の糖脂質合成を担う。糖脂質の合成経路や酵素の機能が詳細に明らかにされているのに対し、酵素が小胞体で合成された後にどの様にして働く場のゴルジ体へ輸送され安定してゴルジ体に留まるのかは未解明である。申請者は代表的な糖脂質であるガングリオシドGM3を合成するGM3合成酵素(GM3S)において細胞質領域N末端側に小胞体からゴルジ体への搬出シグナル(R/K-based motif)を、ゴルジ体から小胞体への逆行輸送シグナル(R-based motif)をもつことを見出した。さらにマウスGM3Sを安定発現させたCHO細胞を用いた解析により、GM3SはN末端領域の長さが異なる複数のアイソフォームが存在し、細胞内輸送シグナルの有無によって異なる細胞内局在や細胞内安定性を付与されることで複数のアイソフォームが協働して安定した糖脂質生合成を行っている可能性を示唆した。 本研究では、ヒトGM3Sが逆行輸送を制御する塩基性アミノ酸クラスター(R11、R12)をもつにも関わらず酵素の一部が小胞体への逆行輸送が行われずにゴルジ体に留まることを見出し、逆行輸送効率低下の原因となるアミノ酸配列を新たに同定した。 近年ではスフィンゴ糖脂質の合成に関わる遺伝子の異常で重篤な臨床症状を引き起こすことも報告されており、筆者らも先天性神経疾患患者の糖鎖合成酵素遺伝子の新規変異について活性評価・機能解析を行い、確定診断につなげた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に得られた新規知見の検証により、当初の研究計画から遅れが生じていた。GM3S、GM2S、SMSのERES局在の比較を行い、小胞体搬出ゾーンの解析を進めている。小胞体搬出を担うCOPII小胞の構成成分Sec24の4つのパラログであるSec24A/B/C/DそれぞれのKO細胞を樹立も進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
Sce24A/B/C/DをそれぞれKOしたHEK293T細胞の樹立後は、当初の研究計画に従って、GM3S、GM2Sで合成されるガングリオ系列糖脂質と結合するコレラトキシンBサブユニット(cholera toxin B, CTx-B)、およびスフィンゴミエリン(SM)結合性タンパク毒素(Lysenin, Equinatoxin II)で染色し、フローサイトメーター(FACS解析)を用いて細胞膜表面の脂質組成を野生型と比較を行う。それによりCOPII小胞への濃縮・積込に関与するSec24の同定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度にコロナ禍による学会参加旅費の削減、および研究計画の遅れに伴う試薬類購入の遅れが発生した。そのため、次年度使用額が生じている。 今年度は当初の研究計画に添った試薬等の購入、対面での学会参加となる予定である。
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