2022 Fiscal Year Research-status Report
微小管の翻訳後修飾による軸糸内輸送網の制御方法に関する分子シミュレーション研究
Project/Area Number |
22K15070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 進太郎 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特別研究員 (20874902)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ダイニン / キネシン / 分子モーター / 分子動力学計算 / 翻訳語修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
軸糸内輸送はdynein-2とkinesin-2が集合体を成したIFT-trainと呼ばれるものによって行われる。kinesin-2が細胞質側から鞭毛・繊毛の先端方向への輸送を担い、dynein-2が逆方向の輸送を担う。この時、軸糸内部の微小管骨格はそれぞれがA管とB管からなるダブレット微小管を形成している。これまでの研究から、kinesin-2がB管上、dynein-2がA管上を運動することが知られていた。だが、この微小管選択機構については明らかにされてこなかった。私は、B管がA管に比べて、微小管の翻訳後修飾が多いことに注目した。つまり、微小管の翻訳語修飾がkinesin-2の運動を促進、または、dynein-2の運動を阻害することによって、dynein-2とkinesin-2の微小管選択が行われているのではないかと考えた。そこで、まずはdynein-2と微小管翻訳後修飾の関係性について調べることとした。
理論的に微小管表面に翻訳語修飾を施し、その表面上でdynein-2の挙動を確認した。具体的にはデチロシン化・ポリグルタミン酸化・ポリグリシン化をそれぞれ、または混ぜた状態で付与した系を作成した。その結果、特にポリグルタミン酸化がdynein-2の歩行運動を著しく阻害している様子が確認された。これらの結果はScientific Reportsに掲載された。
Kubo, S., Bui, K.H. Regulatory mechanisms of the dynein-2 motility by post-translational modification revealed by MD simulation. Sci Rep 13, 1477 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-28026-z
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
目標としていたダイニンとキネシンの微小管選択性能の確認について、ダイニン側のみからであるが、説明のつく結果が得られた。さらに、その結果をまとめた論文が既にパブリッシュされているため、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
キネシン側からの解析を行う。具体的にはキネシンの歩行運動が翻訳語修飾によって強化されるかどうかを分子動力学計算を持って検証する。さらに、実際に翻訳語修飾がダイニン・キネシンの運動にどのように影響を及ぼしているのかも一分子計測を用いて確認したい。この観察は実験系研究者との協力が必要となる。基本的にはカナダのMcGill大学のBui博士の元で観察を行う予定である。
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