2023 Fiscal Year Research-status Report
微小管の翻訳後修飾による軸糸内輸送網の制御方法に関する分子シミュレーション研究
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22K15070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 進太郎 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特別研究員 (20874902)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 分子動力学計算 / ダイニン / 分子モーター / 微小管 / 低温電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小管の翻訳後修飾が微小管上を歩行運動するダイニンにどのような影響を及ぼすのか、粗視化分子動力学計算を用いて検証した。既に、ダイニンと代表的な翻訳後修飾であるpoly-E/poly-G/de-チロシン化については検証を完了させている。本年度では、翻訳後修飾に加え、微小管結合タンパク質の分布とその効果について低温電子顕微鏡を用いた構造解析と併せて研究を行なった。テトラヒメナの繊毛のダブレット微小管には多くの微小管結合タンパク質が付着しており、管状の構造の中でも電気的、はたまた、剛体的に特徴的な部分が局在することが知られている。私は、高分解能の構造獲得により、それらの結合様式をさらに詳細に確かめた。加えて、機械学習の技術を用いて、新たに40種以上の微小管結合タンパク質を同定することにも成功した。具体的に、CFAP77はダブレット微小管のA管とB管を繋ぐ場所に位置することは構造から確認されたが、生化学実験によって、CFAP77のノックアウトが繊毛の遊泳速度や屈曲頻度を下げることを確認した。加えて、粗視化分子動力学計算によって、エネルギー的にみても、確かにCFAP77はA管とB管の結合安定性に寄与していることが確かめられた。構造獲得と生化学実験、そしてシミュレーションを組み合わせることで、微小管結合タンパク質の性能をつぶさに評価することに成功した。本研究から得られた成果を踏まえ、微小管とダイニンの間には、微小管の翻訳後修飾による変化の他にも、直接微小管にタンパク質が結合することで、その歩行様式が大きく制御されることを確かめることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計算のみならず、実験による検証も併せて、実際に論文出版にまで辿り着くことができた。今後は、そのほかの微小管結合タンパク質によるダイニンに対する影響や、また、キネシンの歩行運動についても解析を取り組んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイニンについては、これまでの方法を継続して、CFAP77のように実験と併せた検証を行っていく。さらに、計算手法もこれまでは大まかな運動に注視していたため、粗視化モデルを用いたシミュレーションを基本としていたが、今後は、側鎖の配向や微細な構造変化にも注目していくため、全原子モデルを用いたシミュレーションについても取り組んでいく。また、キネシンに関して、最近、微小管と結合した状態の高分解能の構造が獲得された。そこで、その構造を使用して、キネシンと微小管の関係性についても計算を進めていく。
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