2023 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌によるエピトランスクリプトームの恒常性制御
Project/Area Number |
22K15087
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
寺嶋 秀騎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (60912897)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
宿主の消化管に共生する腸内細菌叢の乱れは、がん・炎症性腸疾患・アレルギー・肥満など様々な疾患のリスク要因であることが知られている。したがって、これらの病態の理解や腸内細菌叢を介した治療法の開発を推進するためには、腸内細菌が宿主に与える影響の分子基盤を解明する必要がある。実際に、腸内細菌叢との相互作用により宿主の遺伝子発現は多大な影響を受けることが知られている。しかし、具体的にどの腸内細菌がどのようなシグナルを介して遺伝子発現に影響するのか、詳細な分子機構については未解明の部分が多く残されている。 本研究では、通常環境下におけるマウスと腸内細菌を持たない無菌マウスの遺伝子発現をRNA-seqデータから比較解析することにより、腸内細菌からの影響を受ける遺伝子を網羅的に探索した。その結果、無菌マウスと比べて通常環境下のマウスにおいては、インターフェロン誘導性遺伝子群が過剰に発現していることを見出した。インターフェロン応答には、mRNAの化学修飾(エピトランスクリプトーム)の1つであるメチル化の寄与が知られている。そこで本研究のRNA-seqデータにおいて、mRNAのメチル化に関与する因子を調べたところ、無菌マウスにおいてそれらの発現に大きな変動は観察されなかった。一方、インターフェロンのシグナル伝達に重要な受容体であるIfngr1の欠損マウスから腸管上皮細胞を採取し遺伝子発現を調べたところ、腸内細菌誘導性の遺伝子のうちいくつかの発現量が低下していることを発見した。また、別のインターフェロン受容体であるIfnar1の欠損マウスにおいては、それらの遺伝子発現に大きな影響はなかった。これらの結果から、腸内細菌を介した遺伝子発現制御の具体的な作用点として、インターフェロンγ受容体の寄与が示唆された。
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