2022 Fiscal Year Research-status Report
多核巨大単細胞生物のRNA局在を支える部位特異的な転写および核外輸送の検証
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22K15106
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
有本 飛鳥 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (00794603)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | RNA輸送 / 核外輸送 / クビレズタ / 緑藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
海ぶどうとしても知られる緑色海藻のクビレズタは、陸上植物に類似した複雑な形態を持ち、数メートルに成長することもあるが、物理的な仕切りを体内にもたない単細胞生物である。単一の巨大な単細胞の各部位を様々な形態に変形させる、もしくは各部位の形態を維持するにあたっては、必要とされる遺伝子を適切な部位に局在することが重要と考えられる。しかしながら、クビレズタの細胞内ではRNAの転写が生じる細胞核を含む各種のオルガネラは特定の部位にとどまらず移動しているため、細胞核で転写されたRNAが細胞内の適切な部位で細胞質に輸送されるとの仮説が生じる。 本研究では、クビレズタの形状が異なる各部位から細胞核と細胞質に存在するRNAを単離し、細胞核と細胞質のRNAレパートリーを部位間や部位内で比較することで、部位特異的なRNAの転写や輸送の有無を明らかにすることを目的としている。本研究においては、細胞核および細胞質に含まれるRNAをそれぞれ単離することが、重要な技術的課題となる。特に細胞質に由来するRNAのみを得る工程は、先行研究において多くの手法が確立されている細胞核RNAの単離と異なり、単離手法の確立のみならず、細胞質以外に由来するRNAの混入を評価する手法の確立も必要とされる。 本年度の研究においては、サンプル調製時に細胞核が損傷すると細胞質に核ゲノムDNAが放出されることに着目し、クビレズタの核ゲノムDNAを高感度かつ特異的に検出するためのリアルタイムPCRに用いるプライマーセットを構築できた。このプライマーセットを用いて、研究開始時に有用と考えられていた手法で細胞質から得たRNAに対して核ゲノムDNAの混入を評価したところ、全サンプルにおいて混入が検出されたため、手法の改良を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度においては、細胞核と細胞質に存在するRNAをそれぞれ単離し、次世代シークエンサーで網羅的に同定してレパートリーを同定する予定であった。しかし、研究開始時に計画していた手法では、細胞核と細胞質のRNAを明確に区別して単離することが困難であることが明らかとなった。とくにサンプル調製時に破損した細胞核に由来するRNAが細胞質に混入することが問題となっている。このように、RNA単離手法の改善が必要となったため、現在は手法の改善に取り組んでいる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた細胞核と細胞質に存在するRNAをそれぞれ区別して単離する方法は、想定していた分離能を示さなかった。したがって、オルガネラ自体の単離方法が確立されている細胞核に由来するRNAを単離調製する一方で、細胞質RNAについては細胞核と細胞質を区別せずに調製し、双方のサンプル間でRNAのレパートリーを比較することが、データの解像度が低下する可能性はあるものの、問題を解決する現実的な手法として想定される。
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Causes of Carryover |
RNAレパートリーの比較解析の研究を進める過程において、比較群間でRNA混入が生じていることが明らかになり、この問題を解決するために時間を割いたことで次世代シークエンスによる網羅的解析が予定通りに実施できず、当該解析に要する費用の支出がなかったため繰り越し経費が発生した。本経費については、令和5年度の請求経費とともに、令和4年度とは異なる手法でのRNAサンプルの調製および網羅的解析に使用する予定である。
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