2022 Fiscal Year Research-status Report
固体化した細胞質をもつ休眠細胞からの復帰機構の解明
Project/Area Number |
22K15110
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
後藤 祐平 基礎生物学研究所, 定量生物学研究部門, 助教 (50814620)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / 休眠細胞 / 細胞質固体化 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内の生化学反応はこれまで流動的な細胞質を想定して議論されてきた。しかし、細胞質の物性はストレス応答などにより固体に近い状態まで流動性を失うこともある。そのような固い細胞質でシグナル伝達がどのように行われているのかは未だ分かっていない。本研究では、分裂酵母の休眠期脱出をモデルシステムとして、固体化した細胞質がどのように環境応答し休眠状態を脱しているのかの分子機構解明を目指す。 そこで、固体化した細胞質で増殖再開シグナルを伝達するためには通常の休眠期特異的な未知の因子が必須であると仮説を立てて、遺伝学と次世代シーケンサーを組み合わせる新規スクリーニング手法を考案した。また、細胞質固体化の人為操作手法を開発することにより、固体化によるストレス耐性と増殖再開能のトレードオフ閾値決定機構の解明を目指す。初年度は、スクリーニング系の開発と光遺伝学操作系の基盤技術の開発を行う。 初年度は、スクリーニング系と光遺伝学系の開発を行ったが、どちらも系の実現可能性を検証する段階までしか行けておらず、完成にはさらなる時間を要することが分かった。しかし、その過程で休眠細胞の細胞質物性制御における新しい分子機構が分かってきたために、今後はそれを利用してスクリーニング系や光遺伝学系の改良を行っていく。また、新規分子機構の解析で得られた変異体を用いれば、光遺伝学とは異なる方法でストレス耐性と増殖のトレードオフを検証できる可能性も出てきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝学と次世代シーケンサーを組み合わせる新規スクリーニング手法については、休眠細胞特異的な発現系を確立したが、トランスポゾン酵素発現系の最適化を行っている途中である。光遺伝学系については基盤的な操作技術の開発には成功したものの、実際に細胞質固体化を制御できる系への応用はまだできていない。 しかし、分裂酵母胞子の細胞質物性や発芽への影響を調べているうちに、分子機構の一端が明らかとなってきており、それに基づいたスクリーニング系や光遺伝学系の改良もはじめ、当初予定よりも研究規模が大きくなったために全体の進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
新規スクリーニング手法については、次年度中に系を完成させ概念実証をとるところまで進める。時間的な猶予があれば、本来の最終目的である休眠細胞でのスクリーニングを行う。光遺伝学については、当初予定していたターゲットに加えて、解析途中で明らかとなってきた新規ターゲットについても設計を行う。ストレス耐性実験の立ち上げは済んでいるので、ツールができ次第ストレス耐性と細胞質物性のトレードオフを検証する。また、十分有効な光遺伝学ツールが作成できなかったときに備えて、分裂酵母の生活環の中で細胞質物性が変化する時期を体系的に取得し、それらに異常が出る変異体とともにストレス耐性実験を行うことで、トレードオフを間接的に検証することも並行して行っていく。
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Causes of Carryover |
実験系の開発段階で予定より進行が遅れているために、その実験系を用いた実験で使用する消耗品などの購入を今年度は見送り、次年度購入しようと考えた。次年度には、当初予定で購入するはずであった消耗品の購入を行う。
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