2022 Fiscal Year Research-status Report
葉脈の表現型ゆらぎと多様性を生む発生プログラムの解明
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22K15141
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北沢 美帆 大阪大学, 全学教育推進機構, 講師 (60759158)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 被子植物 / 葉脈 / 羽状分岐 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、被子植物の多様な葉脈パタンの背後にある発生過程および進化の解明を目的とし、種内の表現型ゆらぎと種間の差に注目した解析を進めている。令和4年度は、葉脈の表現型ゆらぎの測定に適した系を選定するため、真正双子葉5目9科11種、単子葉植物3目4科4種の葉を採取して画像化し、ImageJ を用いて葉脈の抽出を行った。うち葉脈が明確に抽出できた4種総計152枚の葉について側脈の間隔を測定し、葉の大きさ・形状と葉脈パタンの相関の有無、種間の違いを解析した。その結果、葉の大きさに対する側脈の本数・間隔の増加はおおむね種間で共通する一方、側脈間隔のばらつきの程度は種間で異なる可能性が示唆された。以上の定量的な計測と並行して定性的な観察を行い、側脈間隔のばらつきの違いは発生過程における側脈の増加ルールの違いによるとの仮説を立てた。この仮説を検証するため、葉脈パタン形成を再現する数理モデルの先行研究(Runions et al. 2005)を参考に、実測した葉の形状に基づく疑似成長を組み込んだ数理モデルを構築した。これらの結果を、日本植物学会および日本植物生理学会年会で報告した。 並行して、表現型ゆらぎの検討には多数の葉の計測が必要となるため、計測手法の自動化を検討した。ImageJ で抽出した葉脈のうち側脈のみを検出し、側脈の長さや主脈との分岐点の座標を出力するプログラムを作成した。今後はより多くのサンプルについて解析を進めるとともに、数理モデルの改良を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
画像解析については、葉脈パタンを安定的に計測する手順を確立し、複数の種に適用できることを確認した。種内での表現型ゆらぎが側脈間隔にみられることを確認し、種間での違いを見出した。さらに側脈の検出の自動化を進め、一部手作業による修正は必要であるが、これまでより速く解析ができるようになった。これにより、短時間で多数の計測を行うことができるようになり、課題期間内に十分なサンプルサイズが得られる見通しが立った。数理モデルについては、先行研究における葉脈パタン形成の数理モデルをもとに、実測した葉の形状による疑似成長を組み込めることを確認した。以上のように、令和4年度は手法面を概ね確立できたため、順調に進展しているとの自己評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
側脈の分岐間隔の測定手順が概ね確立できたため、今後は種数及び種内のサンプルサイズを増やして解析を行う予定である。特に、現在は単子葉植物のサンプルサイズが小さいため、単子葉植物複数種について表現型ゆらぎの計測を進める。また、学会での議論を通して、単子葉植物と真正双子葉植物のように遠縁の種だけでなく、より近縁な種での比較の必要性が明らかとなったため、同科あるいは同属内の複数種について解析を行う予定である。さらに、これまでに、側脈の分岐点の分布と葉の輪郭形状に相関がある可能性を示唆する予備的な結果を得ている。今後、楕円フーリエ変換の係数や輪郭の曲率など葉の形状を表す指標と、側脈の分岐点の分布の相関を評価する方法の確立を進める。 同時に、数理モデルの改良を進め、より実際の発生過程に近いモデルの構築を行う。葉脈パタンの再現、特に画像解析から得られた側脈間隔のばらつきの違いが、どのようなパラメータ変化により説明できるか検証する予定である。
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Research Products
(2 results)