2022 Fiscal Year Research-status Report
ヤツメウナギ内柱の発生機序解明と脊索動物内柱の相同性再検証
Project/Area Number |
22K15153
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 亙 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90755307)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 円口類 / ヤツメウナギ / 内柱 / 甲状腺 / 進化 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現生脊椎動物の中で円口類ヤツメウナギの幼生だけが持つ内柱の形態発生を司る分子基盤を解明することにある。これまでヤツメウナギ類の内柱はホヤやナメクジウオの内柱と相同であり、脊椎動物の祖先形質だと広く認知されてきた。しかしながら、化石研究や申請者らのヌタウナギ甲状腺の比較発生学的研究によって、ヤツメウナギの内柱が二次的に獲得された派生形質である可能性が示唆されている。果たして、ヤツメウナギの内柱は脊椎動物の共通祖先が持っていた祖先的な形質なのか?それともヤツメウナギで新たに獲得された形質なのか?この疑問を解決するため、本研究ではヤツメウナギの内柱発生に関する分子基盤を明らかにすることを目的とする。 本研究ではPIC(領域特異的RNA-seq)法を採用し、内柱特異的な遺伝子発現プロファイルの取得を目指す。PIC法は、特定領域のみをUV照射することでその領域の網羅的な遺伝子発現を明らかにする手法である。ここで同定された内柱の発生への関与が疑われる遺伝子については、機能解析実験を行い、その機能を検証することで、内柱発生の分子基盤の解明を目指す。 本年度は人工授精によって得られた受精卵を発生させ、各発生段階の胚(St.21, 22, 23, 24)の新鮮凍結組織切片を作成し、PICライブラリ作製の条件検討を行った。通常の蛍光顕微鏡の視野絞りでは、内柱周辺組織のコンタミネーションが生じることが明らかとなったため、より視野の狭い特注の蛍光視野絞りを発注した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新鮮凍結切片からのライブラリ作製は同日同条件での解析でなければ、同じ試料であってもクオリティに大きな差が生じることが明らかとなった。また、通常の蛍光視野絞りでは辺縁部のフレアによって、目的組織(内柱)以外の周辺組織のコンタミネーションが生じてしまうことも明らかとなった。これらの問題を解決するため、厳密な条件設定と、新規に特注の視野絞りを発注した。
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Strategy for Future Research Activity |
サンプルの準備に関して遅れが出ているものの、来年度に向けて条件検討を完了しており、当初計画通り、来年度中には内柱特異的な遺伝子発現プロファイルを取得可能である。
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Causes of Carryover |
初年度に実施できなかった本格的な受託シーケンス解析費用を次年度に繰り越している。既に条件検討は完了しており、初年度経費とあわせて、次年度中に受託解析を完了する計画である。
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