2022 Fiscal Year Research-status Report
水流を感受する感覚器の多様性とその意義を,野生魚類を用いて解明する
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22K15173
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 真央 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 日本学術振興会特別研究員 (30909388)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 感丘 / 個体成長 / 側線系 / テンジクダイ科 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,テンジクダイ科魚類の成魚にみられる感丘の発達程度の種間差は,一連の側線系形成過程が終了するタイミングが種間において異時的に異なることで生じているかを検証した.そのために,テンジクダイ科(およびその近縁群であるハゼ亜目)の中心的な研究対象種において,稚魚期からの成長に伴う側線系の形成過程を観察した.その結果,テンジクダイ科スジイシモチ属等では小型種の側線系は同属他種の幼魚時にみられる特徴を残しているといえる状態であった.代表者の以前の研究によってそのような例がテンジクダイ科の一部にみられることは明らかになってはいたが,本年度の結果は前述の現象が科内で普遍的にみられることを示すうえで重要といえる.また,テンジクダイ科の駆幹部側線系の形成過程初期には,一般的なスズキ系魚類にみられる状態(感丘が比較的少数)を経ることも確認できたことから,テンジクダイ科の比較的発達した側線系と一般的な状態との関係性も議論できた. テンジクダイ科の近縁群であり,多数の感丘をもつという特徴がテンジクダイ科と共通しているハゼ亜目では,テンジクダイ科とは異なり浮遊仔魚期にはほぼ成魚と同様な感丘の配置がみられた.研究当初にはテンジクダイ科とハゼ亜目では類似した感丘の形成過程を経ると予想していたが,実際は2グループ間で大きく異なると判明した. 中心的な研究対象種の形態的・系統的位置づけ(どの程度派生的か)を把握するために,テンジクダイ科魚類をひろく採集・観察した.今後テンジクダイ科全体の側線系の多様化過程も網羅的なデータに基づき提示できると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主題のひとつである,側線系の発達程度が異なる種間における側線系形成過程の比較について一定のデータを得られた.また,個体成長の観察に用いた種の系統的・形態的位置づけについて議論するために必要な,祖先的な深海性テンジクダイ科魚類オニイシモチを複数個体採集できた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,感丘が増加することの意義を機能形態学的側面から明らかにする.具体的には,感丘の増加がみられる種とみられない種間において,感丘の感受方向性等を比較する.また,自ら収集したサンプルに基づいてテンジクダイ科の頑健な分子系統樹の構築を試みる.
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Causes of Carryover |
予定していた出張2件(鹿児島大学総合研究博物館10日間と,熊本県での魚類採集調査7日間)が,代表者の体調不良(罹患)のために次年度へ延期せざるを得なくなったため.また,この出張2件で入手する予定であったサンプルの解析(DNA解析用の消耗品購入等)も次年度に行うこととなった. これらの本年度に実行できなかった出張・解析は,次年度において十分に行える見込みである.
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