2022 Fiscal Year Research-status Report
地域季節特異的な特殊食性を支える腸内細菌:ニホンザルのササ食を支える解毒能の解明
Project/Area Number |
22K15192
|
Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
橋戸 南美 (鈴木南美) 中部大学, 応用生物学部, 日本学術振興会特別研究員 (60772118)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ニホンザル / 青酸配糖体 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
食資源が限られた地域に生息する野生動物は、他の地域では採食しないような二次代謝物質や難消化性物質を多く含む食物を採食することがある。屋久島の標高1700m以上のササ原に生息するニホンザルは、夏の間ササの一種であるヤクシマヤダケのタケノコ、新芽のみを食べている。ササ類に近縁なタケ類は有毒な青酸配糖体や繊維質を多く含み、ヤクシマヤダケもこれらを多く含むことが推測される。本研究では、他地域には見られない特徴的な食性を示す屋久島山頂部のニホンザルの腸内細菌を調べ、これらの食性を可能にする腸内細菌の機能特性を解明することを目的とした。 本年度6月に日本モンキーセンター飼育ヤクシマザル、7月に屋久島山頂部・低地部の野生ヤクシマザルの新鮮糞のサンプリングを行った。新鮮糞を嫌気性希釈液で希釈した後、青酸配糖体含有培地で培養後のシアン発生量の測定、青酸配糖体含有培地での集積培養後の細菌分離、分離菌の糖分解性試験を行った。シアン発生量には個体の生息地ごとに違いが見られ、この違いは採食食物の違いに起因していることが示唆された。また集積培養で3地域由来個体すべてから分離されたLimosilactobacillus mucosaeの糖分解性を比較したところ、野生由来株は飼育由来株に比べて多種類の糖を分解し、特に山頂部由来株ではトレハロースやセロビオースに対する高い分解性を示した。これらの機能特性が山頂部のササ食に関連していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
7月に屋久島での調査を行い、観察することが難しい屋久島山頂部に生息するニホンザルの新鮮糞を採取することができ、青酸配糖体含有培地を用いた集積培養および、腸内細菌の分離培養を行った。生息地間での比較から興味深い結果が得られたため、今年度はこの成果の学会発表を予定している。また、現地調査や植物サンプリングに必要な申請手続き等をすべて終え、次年度以降の研究環境が整った。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を日本霊長類学会で発表する予定である。実験については、次世代シーケンサーを用いて腸内細菌の遺伝子網羅解析を行い、生息地間での菌叢の比較を行う。また、追加で飼育ニホンザル新鮮糞のサンプリングを行い、野生個体の結果との比較を行う。
|
Causes of Carryover |
次世代シーケンサーを用いた腸内細菌叢の網羅解析について、共同研究者の所有する機器を用いて行う予定であったが、外注での網羅解析の費用の方が比較的安価であったため、使用額を抑えることができた。今年度は化学分析を行う予定であるので、その試薬や機器等を購入する予定である。
|