2023 Fiscal Year Research-status Report
地域季節特異的な特殊食性を支える腸内細菌:ニホンザルのササ食を支える解毒能の解明
Project/Area Number |
22K15192
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
橋戸 南美 (鈴木南美) 中部大学, 応用生物学部, 日本学術振興会特別研究員 (60772118)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ニホンザル / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
食資源が限られた地域に生息する野生動物は、他の地域では採食しないような二次代謝物質や難消化性物質を多く含む食物を採食することがある。屋久島の標高1700m以上のササ原に生息するニホンザルの亜種ヤクシマザルは、夏の間ササの一種であるヤクシマヤダケ(Pseudosasa owatarii)のタケノコ、新芽のみを食べている。ササ類に近縁なタケ類は有毒な青酸配糖体や繊維質を多く含み、ヤクシマヤダケもこれらを多く含むことが推測される。本研究では、他地域には見られない特徴的な食性を示す屋久島山頂部のヤクシマザルの腸内細菌を調べ、これらの食性を可能にする腸内細菌の機能特性を解明することを目的とした。 昨年度に、屋久島山頂部および低地部で野生ヤクシマザルの糞のサンプリング(山頂部3サンプル、低地部3サンプル)を行った。本年度は、昨年度に採取したヤクシマザルの糞および、本年度に日本モンキーセンターで採取した飼育ヤクシマザル(飼育3サンプル)の糞よりDNAを抽出し、計9サンプルを用いて、次世代シーケンサーによる腸内細菌の菌叢解析を行った。ササ食を行う屋久島山頂部のヤクシマザルは、果実採食量の多い低地部や固形飼料を主食とする飼育の個体に比べて腸内細菌叢の多様性が低く、菌種の偏りが大きかった。また、山頂部のヤクシマザルは、低地部の個体に比べて、草食動物で繊維分解を担うグループに属する腸内細菌を多くもっており、これらの菌が繊維質に富んだササの分解に寄与していることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は腸内細菌の培養を中心とした解析を行ったが、本年度は、昨年度に採取した野生個体の糞および本年度に採取した飼育個体の糞より抽出したDNAを用いたDNAをベースとした菌叢解析を行い、昨年度までの培養データを裏付けるようなDNAデータを得られることができた。またこれまでの成果を日本霊長類学会で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をまとめて論文を執筆する予定である。またデータをまとめながら、さらにサンプリングや解析が必要であれば、屋久島での追加サンプリングや培養試験等を行う。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンサーを用いた腸内細菌叢の網羅解析について、共同研究者の所有する機器および解析ソフトを用いて行う予定であったが、外注での網羅解析が比較的安価であったため、使用額を抑えることができた。次年度は化学分析や培養試験等を行う予定であるので、その試薬や機器等を購入する予定である。
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