2023 Fiscal Year Research-status Report
頭低位負荷時における内頸静脈弁の静脈血逆流防止機能に関する研究
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22K15194
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加藤 智一 日本大学, 医学部, 助教 (10786346)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 内頸静脈弁 / 内頸静脈 / 頭低位 / 体液シフト |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、健康成人50例を対象に、超音波検査機器を使用して、左右の内頸静脈弁の存在有無を調査した。結果、年度内に50例(男性25例、女性25例)の研究対象者を確保し、さらに、全例について調査を完了することができた。その結果、内頸静脈弁を両側に認める者の割合は54%(両側存在群)、片側のみに認める者は32%(片側存在群)、両側ともに認めない者は14%(両側欠損群)だった。特に左右両側に内頸静脈弁を認める者の割合は、先行研究よりも若干高い割合だった。 一方で、超音波検査機器で弁の「欠損」を判定することが、精度上困難であることが明らかになった。厳密に内頸静脈弁の存在有無の割合について明らかにするためには、肉眼解剖学的アプローチが必要であると考え、そこで当初予定にはなかったが、生体構造医学分野(解剖学)との共同研究として、ご献体を用いて、頸部静脈弁について存在有無、弁の性状、弁の位置などを調べる「肉眼解剖学的アプローチによる頸部静脈弁に関する研究」を立案し、倫理委員会承認および実施許可を得た。予備実験では、内頸静脈だけでなく、外頸静脈や椎骨静脈にも静脈弁を認めるなど新しい知見が得られた。 また、超音波検査機器を用いて、いきみ動作中に内頸静脈弁の逆流の有無を確認する逆流防止機能の評価方法について検討した。当教室で所有している超音波プローブが比較的大型だったため、鎖骨と干渉し、内頸静脈弁を長軸像で描出するのが困難な場合があった。その対策として、より小型のリニアプローブを購入した。その結果、長軸像で内頸静脈弁を描出できない例が減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、COVID-19感染の影響で、研究対象者の確保が困難だったため、研究開始が遅れた。2023年度は、感染対策の緩和や登校する学生の増加と相まって研究対象者の確保が順調にいき、2023年度内に、50例の健康成人(男性25例、女性25例)に対して、超音波検査機器を使用して、左右の内頸静脈弁の存在有無について調査する研究を予定通り完了することができた。しかし、研究開始時の計画では、2023年度内に、頭低位負荷中の内頸静脈弁の逆流防止機能について検討する研究も開始する予定だったが、現段階では、倫理委員会の承認を得ておらず、開始できていない。COVID-19感染の影響で研究開始時期が遅れたことが現段階の進捗状況に影響しており、研究全体としての進捗状況は未だやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始時の計画では、研究課題「超音波検査機器を用いた内頸静脈弁の存在有無に関する研究」の結果を基に、左右の内頸静脈弁について「両側存在群」、「片側存在群」、「両側欠損群」の3群に分類し、それぞれの群で頭低位負荷中の逆流血液量を比較する予定だった。しかし、超音波検査機器を用いて、内頸静脈弁の欠損の判定が困難であることから、研究計画を少し変更することにした。そこで、「頭低位によって、内頸静脈弁の逆流防止機能が低下する」という研究仮説を立て、右内頸静脈弁を有する者を研究対象者とし、水平位と頭低位でいきみ動作をさせ、頭低位で逆流を認める例が増加するか検証することにした。この研究計画では、右内頸静脈弁を認める者を対象に実験を行うため、研究対象者は約30例前後となり、当初の予定の実施例数(50例)より少ないことから、研究の進捗状況の遅れを挽回できると考えている。倫理委員会の書類は作成済みであり、2024年5月の倫理委員会にて審査を受ける予定である(研究課題名「頭低位負荷中の内頸静脈弁の逆流防止機能に関する研究」)。さらに、研究対象者の確保は既に完了しているため、倫理員会の承認および研究実施許可が得られれば研究が直ちに開始できる。 研究課題「超音波検査機器を用いた内頸静脈弁の存在有無に関する研究」によって得られた超音波検査による左右の内頸静脈弁の存在割合については、2024年度内に日本宇宙航空環境医学会大会にて学会発表および日大医学雑誌に研究報告として投稿する予定である。既に、倫理委員会の承認および実施許可を得ている研究課題「肉眼解剖学的アプローチによる頸部静脈弁に関する研究」については、本学生体構造医学分野(解剖学)との共同研究として2024年度4月より開始する。この研究では、内頸静脈弁だけでなく、未だ十分に検討されていない椎骨静脈や外頸動脈についても静脈弁の検索をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
研究開始時の予定では、2023年度において、左右の内頸静脈弁の存在有無を調査する研究に加え、頭低位負荷中の内頸静脈弁の逆流防止機能について検討する研究を開始し、約10から15例に対して実験を行う予定だった。しかし、2023年度内に開始できなかったため、研究参加者に支払う謝金として計上していた費用が未使用だった。2024年度に実験を開始し、研究参加者への謝金として使用する予定である。
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