2022 Fiscal Year Research-status Report
Effects of Urbanization on Gut Microbiome in Laos
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22K15195
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
増岡 弘晃 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員 (00903692)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸内マイクロバイオーム / メタゲノム解析 / 衛生仮説 / 近代化 / ラオス / 発展途上国 / アレルギー性疾患 / 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、世界各地で都市化が進んでおり、アレルギー疾患や自己免疫疾患の罹患率の増加との関連が疑われている。都市住民は、農村住民よりも高脂肪食の摂取量が多く、腸内共生微生物の構成も大きく異なると同時に生物多様性が低いことも分かっている。経済発展によって腸内の多くの微生物種および機能遺伝子が失われたことが、先進国での様々な疾患の罹患率増加に大きく寄与した可能性が示唆される(衛生仮説)。 2022年度は、ラオス北部における都市化の程度の異なる複数のコミュニティを対象に腸内マイクロバイオームの詳細なショートリードのメタゲノム解析を行い、2千万以上の微生物機能遺伝子、および1500以上の微生物ゲノムを検出・再構築することができた。一方で、都市化によって失われた機能遺伝子をより網羅的に探索するため、既に公開がされている発展途上国の人々の腸内マイクロバイオームデータの再解析も行った。これらの外部コホートとして、カメルーン、タンザニア、マダガスカル、ペルー、エチオピア、南アフリカ、アイルランドの特定の集団を対象とした。ラオスを含む数コホートでは、経済指標の異なる集団が含まれており、これらの情報を用いて経済発展によって失われる傾向の強い微生物因子(missing microbes)を統計的に探索する予定である。 さらに、missing microbesが、疾患患者の腸内マイクロバイオームにおいてどのような特徴を示すかを調べるため、本研究では疾患外部コホートについても再解析を行った。アレルギー性疾患としてアトピー性皮膚炎、自己免疫疾患として炎症性腸疾患、多発性硬化症、関節リウマチ等を対象とした。今後、こうした疾患の患者の腸内マイクロバイオームで減少しているmissing microbesの種類を解析し、どのようなメカニズムが背景に存在しているかを推定することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度までに、ラオス北部の山岳民族コホート、その他の発展途上国のコホート、そして疾患コホートの腸内マイクロバイオームデータの基本的な解析が完了し、ショートリードデータおよびアセンブリデータがすぐに使用できる状態となった。 また、ロングリードNGSを用いたメタゲノム解析についても、プロトコルの改良が進んだため、2023年度以降の解析が可能となった。このように、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ラオスを含む数コホートでは経済指標の異なる集団が含まれており、これらの情報を用いて経済発展によって失われる傾向の強い微生物因子(missing microbes)を統計的に探索する。さらに、missing microbesのデータを活用し、疾患コホート内の分布の評価を行うことで、疾患患者の腸内マイクロバイオームで減少しているmissing microbesの種類や存在比を解析し、どのようなメカニズムが背景に存在しているかを推定する。 一方で、これまでに研究で使用してきたショートリードNGS由来のデータは断片化していることが知られており、完全長のゲノム解析にはロングリードNGSが必要不可欠である。2023年度では、一部のサンプルをロングリードメタゲノムによって解析し、バクテリオファージやプラスミドなどの細菌以外のmissing microbesの分布についても検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行を鑑み、現地調査および海外で開催された国際学会への参加を取りやめたため。 また、ロングリード次世代シークエンサーでの解析のプロトコルを改良する必要があり、運用を延期したため。
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