2022 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラ間接触部位における糖脂質分解経路依存的な軸索発達メカニズムの解明
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22K15198
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
壷井 將史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20847123)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 小胞体-リソソーム接触 / ニューロン / 糖脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
正確なニューロンの軸索の発達には、脂質の一つであるセラミドとその代謝物である糖脂質の組成が厳密に制御されている必要がある。リソソームにおいて糖脂質を分解し、生成されたセラミドを小胞体へと還元するサルベージ経路は糖脂質組成を規定する重要な経路であるが、その軸索発達における重要性は全く未知である。本研究では、小胞体-リソソーム接触場が糖脂質サルベージ経路を介して軸索分岐形成を制御する可能性について検討した。本年度は、小胞体-リソソーム接触形成を担うPDZD8タンパク質をAID法を用いて迅速分解することに成功した。さらにPDZD8が大脳皮質ニューロンにおいて軸索分岐の形成過程の制御に関わることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、(1) 小胞体-リソソーム接触形成因子PDZD8が糖脂質代謝経路のどの反応制御に必要かを調べるため、まずは培養細胞を用いてAID法によるPDZD8分解の速度を検討した。その結果、2時間で80%以上ものPDZD8タンパク質が分解されることを見出した。 さらに、(2) PDZD8ノックダウンによる軸索分岐形成低下が、軸索分岐形成の抑制に必要か、もしくは軸索分岐の除去に必要か明らかにするため、刈り込みがまだ頻繁に起こっていない生後12日目のマウス大脳で解析を行ったところ、PDZD8ノックアウトにより軸索分岐の低下が見られた。このことはPDZD8が軸索分岐形成過程の制御に関わることを強く示唆する。 一方で、当初の計画で予定していた (3) 糖脂質サルベージ経路の軸索分岐形成における作用点の解明について、当初予定していたLC-MSによるリピドーム解析に至らなかった。以上から、本研究は当初の計画からやや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、小胞体-リソソーム接触形成を担うPDZD8タンパク質をAID法を用いて迅速分解することに成功した。さらにPDZD8が大脳皮質ニューロンにおいて軸索分岐の形成過程の制御に関わることを見出した。しかしながら、当初計画していた糖脂質サルベージ経路の軸索分岐形成における作用点の解明には到っていない。今後は、ニューロンの局性培養系とAID法を応用した軸索特異的なPDZD8タンパク質分解系構築の最適化を行い、LC-MSを用いたリピドーム解析によりPDZD8がどの経路制御に関わるかを明確にする。本年度に確立したAID法によるPDZD8タンパク質の迅速分解系の構築は、今後の解析速度を加速させ本年度の研究の遅れを解消するものであると考えている。また、上記の実験に加えて今後は、軸索区画の局所的な糖脂質サルベージ経路が軸索分岐形成を制御するかについても検討する。
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