2022 Fiscal Year Research-status Report
成体脳における新生ニューロンの移動メカニズム解明と大脳皮質傷害の新規治療法開発
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22K15202
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
松本 真実 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 特任助教 (90880807)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニューロン移動 / 脳室下帯 / 細胞接着 / 成体脳ニューロン新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
成体の脳内では、限られた領域において神経幹細胞から新しいニューロンが持続的に産生されている。これらの新生ニューロンは鎖状に連なって脳内を高速移動し、目的の領域に到達すると成熟し、脳機能の維持に寄与している。脳梗塞などの脳傷害の際にも、一部の新生ニューロンが正常な脳と同様に鎖状に連なって傷害部へと移動する。しかし、その機序の多くは未だ不明である。本研究では、新生ニューロンが鎖状に連なって移動する際のニューロン間の接着に着目し、新生ニューロンが接着しながら移動するメカニズムを解明するとともに、その移動メカニズムへの介入によって、成体大脳皮質傷害に対する新たな治療法の開発を目的とした。 当該年度においては、正常脳および傷害脳内を移動する新生ニューロンの細胞接着の解析を行なった。具体的には連続ブロック走査型電子顕微鏡を使用し、正常脳内および傷害脳内を集団移動する新生ニューロンの細胞接着を三次元的に解析した。この三次元電子顕微鏡を用いた解析において、最も時間を要する電子顕微鏡画像から必要な情報を抽出するセグメンテーションや多くの知識や経験が求められる細胞種の判別の過程を効率よく行うため、AIを用いた細胞種判別およびセグメンテーションの自動化を試みた。次に、正常脳内および傷害脳内を移動する新生ニューロンの細胞接着がどのように制御されているかを調べるために、新生ニューロン間の細胞接着関連分子を調整する分子に着目し、その分子の発現解析を行った。さらに、新生ニューロンにおける細胞接着関連分子を調整する分子を調べるために、これらの分子の発現抑制実験を行った。これらの実験の結果から、傷害脳内を集団移動する新生ニューロンでは、細胞接着関連分子を調整する分子の発現が変化することで、細胞接着関連分子の発現が変化し、細胞間の接着状態に変化を生じていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画していた研究を全て実施し、正常脳内および傷害脳内を移動する新生ニューロンの細胞接着と細胞接着関連分子を調整する分子に関する研究成果が得られたため、当該年度の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はR4年度の研究結果をもとに、細胞接着関連分子の発現を調整する分子に着目し、傷害脳の新生ニューロンの移動促進やニューロン再生への効果を調べる予定である。これらの実験から、本研究で明らかにした新生ニューロンの移動メカニズムへの介入によって成体脳傷害を再生させる新規治療法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由 R4年度には、細胞接着分子の発現を調整する分子に関し、薬剤を多数購入する予定だったが、予定数よりも少ない数で実験の結果を得ることができたため、当初の見込み額と執行額が異なり、未使用額が生じた。 次年度の使用額の使用計画 研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め当初の予定通り研究を進めていく。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] 成体脳内を集団移動する新生ニューロンの細胞接着変化2023
Author(s)
Matsumoto Mami, Wen Chentao, Nguyen Bang Huy, Thai Quynh Truc, Herranz-Perez Vicente, Sawada Masato, Garcia-Verdugo Mannuel Jose, Seki Tatsunori, Kimura D. Koutarou, Ohno Nobuhiko, Sawamoto Kazunobu
Organizer
NCU Life Science + IBS poster workshop
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[Presentation] ミクログリアによるフォスファチジルセリン依存的な成体新生ニューロンのシナプス貪食 Synaptic pruning of murine adult-born neurons by microglia depends on phosphatidylserin2022
Author(s)
Kurematsu Chihiro, Sawada Masato, Ohmuraya Masaki, Tanaka Motoki, Kuboyama Kazuya, Ogino Takashi, Matsumoto Mami, Oishi Hisashi,Inada Hiroyuki, Kohsaka Shinichi, Ohno Nobuhiko, Yamada K. Maki, Asai Masato, Sokabe Masahiro, Nabekura Junichi, Asano Kenichi, Tanaka Masato, Sawamoto Kazunobu
Organizer
Neuro2022
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[Presentation] 成体脳傷害において集団移動するニューロンの細胞接着変化 Altered cell adhesion in collective neuronal migration in the adult injured brain2022
Author(s)
Matsumoto Mami, Wen Chentao, Nguyen Bang Huy, Thai Quynh Truc, Herranz-Perez Vicente, Sawada Masato, Garcia-Verdugo Manuel Jose, Seki Tatsunori, Kimura D.Koutarou, Ohno Nobuhiko, Sawamoto Kazunobu
Organizer
成体脳のニューロン新生懇談会
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