2022 Fiscal Year Research-status Report
神経幹細胞における非同期的遺伝子発現振動の役割とその制御機構の解明
Project/Area Number |
22K15210
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
塚本 聡美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 特別研究員 (10929847)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 遺伝子振動発現 / 神経・脳発生 / 細胞間コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
転写因子Hes1は、神経幹細胞において、2-3時間周期で振動的に発現し、この振動的発現は、細胞間で非同期的であることが知られる。Hes1の非同期的発現は現象として興味深い一方で、その細胞ごとに固有な振動は、長年、下流遺伝子の探索を困難としてきた。本研究は、「神経幹細胞におけるHes1振動発現の非同期性」に関わる新規遺伝子の抽出とその意義を探るべく実施しているものである。 今年度は、培養神経幹細胞において、光遺伝学的ツール(hGAVPO-Hes1)を用いてHes1遺伝子の同期的な振動発現を誘導し、RNA-seq解析を実施した。その結果、Hes1依存的に発現が変化する候補遺伝子群が抽出された。その中には、細胞間コミュニケーション関連(細胞間シグナル伝達関連因子、細胞接着因子等)の新規遺伝子群が、多数含まれていることがわかった。よって、これらの遺伝子が、Hes1の下流で機能し、神経幹細胞における細胞間連絡の時間的な制御を行なっている可能性が示唆された。 今後は、今年度抽出された遺伝子群の遺伝子改変細胞株(神経幹細胞やマウスES細胞など)を作成し、新規因子が、Hes1の非同期的振動や神経幹細胞の機能に、どのような影響を与えるかを検証する。それにより、Hes1の非同期的振動の神経・脳発生における意義に迫る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養神経幹細胞において、光遺伝学的ツール(hGAVPO-Hes1)を用いてHes1遺伝子の発現を誘導し、RNA-seq解析を実施した。まず、hGAVPO-Hes1を導入した培養神経幹細胞にて、Hes1の誘導がされていることを、qPCR、ウエスタンブロッティングにより確認した。その後、同一条件で、サンプリングしたRNAサンプルについてRNA-seq解析を行なった。その結果、Hes1の遺伝子発現の下流での機能が示唆される、細胞間コミュニケーション関連の新規遺伝子群が、多数抽出された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度同定された因子が、実際に神経幹細胞のHes1依存的な細胞間連絡において機能するかを検証する。具体的には、Hes1レポーターをもつ遺伝子改変神経幹細胞株等を作成し、新規遺伝子がHes1の非同期的振動や神経幹細胞の機能にどのような影響を与えるかを検証する。
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Causes of Carryover |
研究室の移転により、4ヶ月程度、研究開始に遅れが生じたため、一部の実験計画を次年度に回した。
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