2023 Fiscal Year Annual Research Report
抗精神病薬とパーキンソン病治療薬におけるジスキネジア発症機序の共通性について
Project/Area Number |
22K15215
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
阿部 欣史 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80802826)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | L-DOPA誘導性ジスキネジア / 遅発性ジスキネジア / GABA小胞トランスポーター / ドパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病治療薬(L-DOPA)の長期服用によって起こるL-DOPA誘導性ジスキネジア(LID)と抗精神病薬の長期服用によって起こる遅発性ジスキネジア(TD)には、GABAを介した共通する分子メカニズムがあるのではないかと考えている。本研究はこの仮説を検証する事を目的とする。この研究から、GABAがパーキンソン病治療薬や抗精神病薬の長期服用によって起こるジスキネジアを抑える標的分子となるではないかと期待できる。
始めにGABA量自体が増えているのか、LIDとTDモデルマウスを作成し、質量分析イメージング法を用いて調べた結果、淡蒼球と黒質においてGABA量が増加している事が分かった。さらに超解像顕微鏡を用いて、GABA小胞トランスポーター(VGAT)陽性の線条体神経細胞のターミナルを観察したところ、VGAT陽性のターミナルが肥大化している事が分かった。VGAT陽性の ターミナルの肥大化とGABA量増加はLIDとTDに共通して起こっていた。次に、VGATの過剰発現がターミナルの肥大化とGABA量の増加と因果関係があるのかを調べるために、野生型マウスの線条体神経細胞に、AAVを用いてVGATの過剰発現系を導入した。その結果、VGATを過剰発現させることで線条体神経細胞のターミナルは肥大化し、GABA量が増加する事が分かった。さらにVGATの過剰発現によってそれぞれのジスキネジアが悪化する事も分かった。これらの結果から、LIDとTDでは線条体ターミナルでVGATが過剰発現する事でGABAが増加し、ジスキネジアが起こっている事が示唆された。
さらに、なぜVGATが過剰発現するのかを薬理我的な手法を用いて調べた。その結果、線条体のドパミン受容体(D2R)の信号減少とドパミン放出の増減が引き金となって、VGATが過剰発発現し、LIDやDTの発症に繋がることを発見した。
|