2022 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞接着分子OCAMは副嗅覚神経回路の可塑的変化過程にどのように関与するか
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22K15228
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
藤田 博子 高知大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (40322705)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 嗅覚コミュニケーション / 個体認識 / ブルース効果 / 副嗅覚系 / 可塑的変化 / 分子基盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物行動学でブルース効果として知られている妊娠雌マウスによる交配雄フェロモンの刷り込み学習(交配雄とは異なる系統の雄の匂いに曝露すると流産する)は、この現象の基盤となる副嗅球神経回路の細胞、分子レベルでの可塑的変化過程の詳細がまだよくわかっていない。 本研究の目的は、神経接着分子Olfactory Cell Adhesion Molecule(OCAM)が関与して神経回路にダイナミックな変化を引き起こすとの仮説を設定し、細胞及び分子レベルでの副嗅球神経回路の可塑的変化過程を明らかにすることである。 本年度は副嗅球スライスにて電気生理実験を行い、OCAM分子の有無による電気生理的な特性の変化を調べた。OCAMノックアウトマウスを用いたLong Term Potentiation (LTP)実験では誘導期の前期長期増強に異常があり、ポストシナプス(顆粒細胞)側に異常がある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画に上げた内容の個々については下記のように概ね順調に解析が進展しているが、一部がやや遅れ気味であるため。 本年度は副嗅球スライス標本での電気生理実験の追試と確認に加え、さらに薬理学手法と刺激条件の変法などを併用して、OCAM分子の有無による電気生理的な特性の変化を調べた。OCAMノックアウトマウスを用いた①Long Term Potentiation (LTP)実験では誘導期の前期長期増強に異常があり、②副嗅球スライス標本での僧帽細胞-顆粒細胞間シナプスでの入力-出力関係、paired-pulse facilitationなどのシナプス前過程には異常がなく、ポストシナプス(顆粒細胞)側にある可能性が示唆された。また、③組織化学的な解析では感覚神経の僧帽細胞への投射様式は正常であることも確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って実験を進める。 ①電気生理実験では、さらに別の薬理学手法と刺激条件の変法などを併用して、OCAM分子の有無による電気生理的な特性の変化を調べる。LTPの誘導には、今年度100Hzで1s間の処理を3min間隔で4回(100 Hz×4)繰り返す条件を用いたが、刺激頻度、回数を増やすことにより、より強い条件でKO マウスでもLTPが誘導されるか、誘導された後にLTPの維持相(初期・後期)には影響はないか等を検討する。 ②形態学的手法にて副嗅覚系でのOCAMの発現細胞と発現時期の解析を行う。活動依存的な変化に着目して、電気生理実験のスライス標本で電気刺激後の発現の変化も検討する。
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Causes of Carryover |
電気生理実験は以前に導入済みの実験機器とデータ取り込み用のコンピューターを用いているが、これらの不調の対応等で全体の実験計画が遅れ気味になった。そのため、高額試薬、機器、および外注サービスを用いる一部の実験を後回しにしており、これらを次年度にまわすことにした。
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