2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K15230
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
岡本 和樹 順天堂大学, 医学部, 助教 (90865205)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 海馬 / シナプス結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬の神経回路研究は、スライスとしての回路イメージが先行し、本来長い構造であることは見落とされている。しかし、海馬には長軸方向へ長く伸びる軸索が存在する。これは解剖学上の発見にとどまっており、長らく生理的な伝達のパターンや機能は未解明であった。本研究は、海馬長軸に伸びる投射が興奮性優位な伝達であることに着目している。すなわち長軸方向に沿った投射は遠くなるほどに興奮性を強める傾向にある。その背景には抑制を担うGABA細胞とのシナプス結合に選択性があり、海馬長軸方向の遠位に伸びる軸索ほどGABA細胞と結合していないという仮説を立てている。そして、この結合様式を電気生理学・生化学・形態学の手法を用いて多角的に精査すること、また、海馬を長い構造と見立て、得られたデータに基づくシミュレーションで海馬長軸投射の回路パターンの意義の解明を目的としている。 本年度は、これまでに記録した電気生理データに基づき、神経回路の違いが海馬長軸においてどのような影響を及ぼすかをシミュレーションした。Hodgkin-Huxleyモデルを用いて、フィードフォワード抑制の強度を長軸に沿って変化させたところ、近位においてはポストシナプス側の膜電位に高い周波数帯域に強度変化が見られた。以上のことから、海馬の長軸方向の投射は、長軸の距離が延びるほどフィードフォワード抑制の強度を減らすことで、近位と遠位で異なる情報を伝達させていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長軸海馬のシミュレーションに進展があった。当初は長軸方向への発火伝播をモデリングする計画だったが、処理が複雑になって滞っていた。今年度はこの計画を見直し、ポスト側の膜電位変動をシミュレートするというシンプルなモデルに当てはめたことで、よりその意義が明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
Hodgkin-Huxleyモデルを用いたが、発火閾値下膜電位のシミュレートの点で不自然な挙動があった。そこで、発火を含めない膜電位挙動でモデルを再検証する。その後、論文投稿を進める。
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Causes of Carryover |
半導体の流通の滞りや為替の変動などから、予算支出が予想しづらかったために差額が生じた。次年度は高騰する海外試薬の購入に用いる。
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Research Products
(8 results)