2023 Fiscal Year Research-status Report
やる気と運動を制御するサル赤核後部(A8)の機能解明
Project/Area Number |
22K15238
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
鈴木 迪諒 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主任研究員 (50826526)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 運動 / 意欲 / ドーパミン / 運動野 / サル |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、2022年度に取得した実験データの解析を進めた。麻酔下のサルの腹側被蓋野、黒質緻密部、赤核後部を電気刺激した際に誘発される皮質脳波の機能的神経結合の差異を検証した。誘発脳波の潜時は0-30ms, 30-80ms, 80ms以上と大きく3つのコンポーネントに分類される傾向があった。また、大脳皮質感覚運動野との機能的結合の強さ(誘発電位の大きさ)は、腹側被蓋野<黒質緻密部<赤核後部というようにグラディエントに変化していくことがわかった。一方で、眼窩前頭皮質については、腹側被蓋野<赤核後部<黒質緻密部の順で機能的結合が強かった。また、マカクサルの一次運動野上肢領域に逆行性神経トレーサーを注入し、中脳ドーパミン領域の逆行性標識細胞を観察することも実施した。その結果、一次運動野上肢領域へ投射する神経細胞の数の割合は、腹側被蓋野、黒質緻密部に比べ、赤核後部において最も多かった。標識神経細胞の中にはドーパミン神経解剖も非ドーパミン神経細胞も両方存在した。 以上のように、大脳皮質運動野との神経結合の強さは腹側被蓋野や黒質緻密部に比べ、赤核後部が強いという結果は神経解剖の実験と電気生理実験の結果の両方において確認できた。 加えて、行動中の動物から神経活動を記録するための実験用に、2頭の動物の行動課題トレーニングを実施している。構造MRI画像データも取得し、ドーパミン細胞からの記録実験に向けて進んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
行動実験対象個体の行動課題の学習に時間を要したことに加え、別プロジェクトの実験との兼ね合いで、本課題にやや遅れが出ている。しかし、1頭では行動課題のトレーニングは完了しており、対象個体2頭のMRI構造画像も取得済みであるため、2024年度は該当個体の赤核後部(RRF:A8)から行動課題中の活動が記録できるものと想定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、運動課題中の動物から中脳ドーパミン細胞群の神経活動を記録し、力の発揮レベルに依存した神経活動がドーパミン細胞から得られるか否かを明らかにすることを目指す。麻酔下実験で得られた腹側被蓋野<黒質緻密部<赤核後部の順で大脳皮質運動野との機能的結合が強くなることをサポートする様な神経活動の強さのグラディエントが運動課題中のドーパミン細胞から記録できることを期待している。
|
Causes of Carryover |
ドル円相場の変化により、海外学会参加時の旅費の目処がつけづらい状況であったため。余剰分については翌年度助成金と合わせて、電極などの消耗品や学会発表のための旅費、論文の英文校閲代金などに充当してく計画である。
|