2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22K15239
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小島 正寛 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (90824714)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重水素 / 医薬化学 / 光反応 / ラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬化学において有用性の高い重水素を含む新規ビルディングブロックの創出を指向し、触媒的なアルケンの重水素化反応の開発研究を行った。申請者のこれまでの研究においてアルケンの触媒的水素化に有効であったコバルト触媒と光触媒の協働触媒系に着想を得て、重水とアスコルビン酸から発生させたアルコルビン酸-d4を重水素源として用いることで、電子不足アルケンの化学選択的な重水素化反応の開発に成功した。この重水素化反応は既存の不均一系触媒と重水素ガスを用いる重水素化反応とは一線を画するユニークな官能基許容性を有し、多様な官能基を保持したメディシナルケミストリーにおいて有用性の高い含重水素ビルディングブロックの創出が可能であった。さらに今回開発した触媒的重水素化手法は複雑分子のlate-stage変換にも応用可能であり、医薬品の重水素化アナログであるドネペジル-d2の合成にも成功した。実験化学と理論化学の両面から実施した反応機構解析研究の結果、本反応はラジカル的なメカニズムによって進行していることが支持された。この結果はアリールハライド等の官能基に対して高い直交性を有する本反応の基質一般性検討の結果と矛盾しないものであり、合理的な結果であると考えている。今後は重水素化可能なアルケンの置換パターンの拡大、および電子豊富なアルケンの重水素化への応用が課題であり、コバルト触媒と光触媒を用いた新たな反応メカニズムを実現することで、この課題の解決を図る計画である。
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