2022 Fiscal Year Research-status Report
化合物の配座制御を志向した含フッ素化合物の触媒的不斉合成
Project/Area Number |
22K15240
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森崎 一宏 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (80822965)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 配座制御 / フッ素 / 亜鉛 |
Outline of Annual Research Achievements |
化合物の配座固定は、医薬品候補化合物の構造最適化において重要な戦略の一つである。一般に、配座自由度の高い直鎖構造の配座固定は環構造や不飽和構造の導入によって図られるが、これら既存の手法では元の化合物からの大きな構造変化が避けられない。一方、化合物の適切なC-H結合をC-F結合へと置き換えることで立体容積をほとんど変えることなく安定配座を変化させることが可能である。特に、sp3混成炭素上に一つフッ素を有するモノフルオロアルカンは創薬のモチーフとして期待されている。 しかし、モノフルオロアルカンの効率的合成手法の欠如から、配座制御法としての基礎的知見に乏しく実用例も限られている。 本研究ではモノフルオロアルカンの効率的合成法を開拓し、配座固定法としてのフッ素導入の効果・適用範囲を提示を目指している。 これまでに、α-モノフルオロアルキル亜鉛種の調整法を確立し、これらが室温で取り扱い可能であること、種々のカップリング反応に適用可能であることを見出している。さらに、α-フルオロカルベンの安定な前駆体としてフルオロジアジリンに着目し、三重項増感剤を用いた触媒的活性化によるシクロプロパン化を見 出した。このように初年度までに、既存法では合成困難であった種々の官能基化モノフルオロアルカンの効率的かつ収束的な合成に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
モノフルオロアルカンの効率的合成を妨げていたのは、求核的モノフルオロアルキル化試薬の潜在的な不安定性であった。例えば、モノフルオロアルキルリチウムは-78度においても1秒以内に分解してしまう。私は初年度までの研究で、長寿命な求核的含フッ素亜鉛種の調整に成功し、種々のモノフルオロアルカンのカップリングによる合成を達成した。また、見出した新規求核種の詳細な分解過程やNMRによる構造解析にも成功しており、当初の予定よりも早く研究が進行していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
亜鉛試薬を開発することで大幅な安定性の改善に成功しているが、未だに反応効率が低下すると亜鉛試 薬の分解が競合する課題が残っている。また、亜鉛試薬の原料合成に数ステップを要する。2年目となる本年度は、「A.室温で分解しない程度までの安定化」「B.市販品から2 ステップ以内での亜鉛試薬の調整」の達成を目指す。 さらに、上記で見出した含フッ金属種を用いて不斉反応を開発する。含フッ金属種はラセミ体の状態で生成されるため、効率的な不斉反応の開発には含フッ素金属種のラセミ化とそれに伴う動的速度論的光学分割が必要である 。そのため、トランスメタル化で生成する活性種のラセミ化が早い第四周期遷移金属触媒(Fe, Co, Ni, Cu)を検討する。特に、申請者のこれまでの検討で様々な知見が得られている銅を中心に検討し、光学活性なモノフルオロアルカンの合成を達成する。 並行して得られた化合物の配座をNMRおよびDFT計算によって明らかにし、フッ素導入が化合物の配座に与える影響をまとめる。
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