2022 Fiscal Year Research-status Report
ナノ物質の形状分級マススペクトメトリーの確立とナノ毒性学への応用
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22K15260
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田中 佑樹 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (50824041)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナノ物質 / ICP-MS / フィールド・フロー・フラクショネーション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は本研究の基盤となる非対称フロー型のフィールド・フロー・フラクショネーション(AF4)とICP質量分析計(ICP-MS)を組み合わせたAF4-ICP-MSの立ち上げを行い、標準ナノ粒子試料を用いてナノ粒子のサイズ分級の検討を行った。医薬、工業の分野で多用されている二酸化ケイ素(シリカ)及び銀のナノ粒子について、100ナノメートル以下の粒子をサイズごとに分離し、ICP-MSで定量的に検出することに成功した。酸化物及び金属のナノ粒子に適用できたことから、産業上利用されている多くのナノ粒子へも適用可能な方法になると期待される。また、応用として、シリカナノ粒子の培養細胞への取り込み量を評価することを試みた。粒子直径が10、30、50、70、100 ナノメートルの5種類のシリカナノ粒子の混合液をヒト肝細胞がん由来HepG2細胞に曝露し、曝露1時間後に曝露液と細胞を回収した。それぞれ1% SDS溶液で処理した後、超純水で100倍希釈しAF4-ICP-MSによる測定を行った。その結果、曝露した粒子の25%ほどが培養細胞内に取り込まれ、75%は培地中に残存していることが確認され、さらに粒子径ごとに取り込み効率に大きな差異は見られなかった。さらに、シリカ粒子の細胞毒性試験を実施し、粒子径ごとの毒性の差異を検討した。以上のように培養細胞内部からナノ粒子を抽出し、粒子径ごとに分けて計測できたことで、本手法が培養細胞におけるナノ粒子の粒子径ごとの取り込み量を考慮した、定量的で詳細な代謝、毒性評価に有効な手法となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となるAF4-ICP-MSの分析技術を確立し、複数種のナノ粒子を用いたバリデーションを達成した。また、当初は2年目以降に予定していた、培養細胞を用いたナノ粒子の取り込み評価も実施し、標準的な測定方法を確立することができたことで、2年目以降に予定している応用研究への準備も整った。また、学会発表等、成果の発信も十分に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ粒子のサイズ分級については達成することができた。2年目はナノ粒子の形状(銀のナノ粒子、ナノロッド、ナノプレート)や結晶系(二酸化チタンのルチル型、アナターゼ型)ごとに分級し、測定する方法を検討する。また、培養細胞を用いて形状、結晶系ごとの取り込み効率の測定と毒性学的な検査を組み合わせた評価を実施する。
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