2022 Fiscal Year Research-status Report
アトピー性皮膚炎を標的とする環状RNA医薬の基盤構築と最適化
Project/Area Number |
22K15271
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
信田 理沙 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (30930292)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環状RNA / リボソーム / 翻訳 / 翻訳開始 / IRES |
Outline of Annual Research Achievements |
当初環状RNAはmiRNAと相補的な配列を持ち、miRNAの標的への結合を競合的に阻害することで間接的に遺伝子発現を制御する分子として報告された。近年、この環状RNAの機能は多岐にわたって報告されており、miRNAだけではなく、RNA結合タンパク質との相互作用や、機能性タンパク質をコードする環状RNA等、生体にとって重要な機能を担っていることが分かってきた。本研究では遺伝性疾患のうちアトピー性皮膚炎の原因として報告されているFLG遺伝子のナンセンス変異症例におけるフィラグリンタンパク質の不足を解消することを目的として1)効率的な環状化配列、2)効率的な翻訳開始配列を見つけ、最終的な治療応用を目指している。ここで重要となるのは皮膚の層状構造であり、表皮基底層から上層へ向かって遺伝子発現が劇的な変化を起こす点である。つまり、フィラグリンタンパク質を目的の場所で効率よく発現させるには表皮における環状RNAの発現変動を明らかにすることが重要となる。初年度の本年は、細胞内に存在する環状RNAかつ効率的に翻訳が行われる翻訳開始配列を同定するための手法の検討を主に行った。効率的に翻訳される環状RNAの精製にあたり、ショ糖溶液中で超遠心を行い、翻訳されている環状RNAの濃縮を試みた。結果、目的の環状RNAの濃縮には成功したがバックグラウンドが非常に高く、手法の変更を行うこととなった。その後新規に取り組んだ効率的な環状RNAの濃縮方法により大幅なバックグラウンドの軽減が実現されたことからこれら手法を用いて表皮における網羅的な環状RNAの解析が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では細胞内における効率的に翻訳される環状RNAの同定を最初の目標としていた。この解析方法の確立がその後の解析に与える影響が非常に大きく、いかにバックグラウンドを減少させるか、条件決めが重要であり、次年度からスムーズに解析に移行が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は1) 表皮の分化段階に応じたサンプルを用いて、初年度に確立した環状RNAの濃縮と網羅的解析を行い、2)翻訳開始配列の同定と最適化、を進める。 1)表皮角化細胞であるHaCaT細胞にカルシウム添加を行うことで角化を模倣したサンプルを作成する。カルシウム誘導後RNAのラベリングを行うことで転写量と環状化の効率を明らかにする。 2)翻訳開始段階特異的にリボソームをmRNA上にとどめた状態で精製を行い、RNA-seqを行うことで精製されたmRNAのリードの数は翻訳効率に比例して増加することを利用し、翻訳開始配列の同定を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画では今年度RNA-seqを行なう予定だったが、次年度に移行したので、未使用額が生じた。研究計画に変更はないため、次年度の解析に使用予定である。
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