2022 Fiscal Year Research-status Report
B細胞成熟に伴うリン脂質プロファイルの変容とその生理的意義の解明
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22K15272
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近江 純平 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特別研究員 (60846666)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ホスファチジルセリン / 血球分化 / 血球成熟 / 脂肪酸分子種 / B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
B細胞に固有の生存機構でありB細胞受容体(BCR)に着目し、そのCa2+誘発活性とPS合成系との機能的な関連をさらに詳細に解析した。その結果、BCRの抗原依存的な活性化によるCa2+誘発、ならびに抗原非依存的な自発的Ca2+誘発のいずれもPS合成系の抑制によって顕著に亢進することを明らかにした。また、その制御メカニズムが小胞体PSと形質膜PIPsの交換輸送体であるORP5/8を介するものであり、B細胞系のがんにおいてはこの調節機構が生存に極めて重要であることを明らかにした。本研究内容については論文投稿済みであり、現在は査読後のリバイス下にある。 また、当初の計画通り、マウス生体内から分化・活性化の各段階にあるB細胞を単離し、そのリン脂質プロファイルを解析した。その結果、脾臓に存在する主要なサブセットである濾胞B細胞ならびに辺縁帯B細胞は、主として不飽和度が大きいPS分子種を有することを見出した。これらのサブセットの前駆細胞を遡ると、このようなPSの分子種バランスは、骨髄中の造血幹細胞(HSC/MPP)、リンパ球共通祖先細胞(CLP)、ならびにPrePro-B細胞には見られず、Pro-B細胞において顕れ始め、Pre-B細胞の段階でほぼ完成することが明らかとなった。次に、ヒツジ赤血球免疫により誘導される活性化段階のB細胞種(胚中心B細胞、形質細胞、記憶B細胞)についても同様の解析を行ったところ、活性化段階にあるB細胞種では一過的に飽和度が小さいPS分子種が増加することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、生体内B細胞のリン脂質プロファイリングを完了した。また、B細胞リンパ腫をモデルとした一連の解析は論文投稿を行い、現在リバイス下にある。したがって、本研究課題の成果発信についても当初の計画通り順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の解析によって、B細胞の成熟・活性化段階によってPS合成系の変容が示唆された。これをふまえ、令和5年度の解析では、2種のPS合成酵素の各欠損マウスをツールとして、各分化・活性化段階にあるB細胞の数・活性化能等を指標に表現型解析を実施する予定である。また、PS合成酵素の過剰活性化型変異体をノックインしたマウスを樹立済みであり、本マウスは生体内レベルでPS合成酵素の活性を摂動できるツールとして利用可能と考える。研究課題の進展状況によっては、B細胞特異的に本変異体を発現するマウスを作出し、その表現型解析についても実施する予定である。
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Research Products
(6 results)