2023 Fiscal Year Annual Research Report
生理的微小温度変化によるuORFを介した生物時計位相制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K15274
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三宅 崇仁 京都大学, 薬学研究科, 助教 (70836866)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 体内時計 / 発現制御機構 / 翻訳 / 体温 / uORF |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、体内時計が概日体温変動という微小でゆるやかな温度変化により調律される機構の解明を目的に研究を行った。具体的には、まず、コア時計遺伝子のタンパク質発現量が体温レベルの温度変化(35℃→38.5℃)の影響を受けるかを調べたところ、コア時計振動子であるPer2のタンパク質量だけが温度に依存して上昇することを発見した。このPer2発現の温度応答性には時刻依存性があり、Per2増加期に温度を与えたときのみ、タンパク質が増えることがわかった。ところが、このときPer2 mRNAの発現量は温度に影響を受けていなかった。その後の研究において、Per2タンパク質発現量の温度応答性はmRNA翻訳レベルで制御されていることが明らかになった。次にmRNA上のリボソーム位置を可視化できるリボソームプロファイリングを行った結果、Per2 mRNAの5UTR配列上にuORFを見つけた。Per2のuORFはuORFの中でも特殊な、開始コドンと終止コドンの2コドンしか有さない最小単位uORF(minimal uORF, m-uORF)であったため、レポーターアッセイを用いてミニマルな構造の重要性を調べた結果、このミニマルな構造がないと、Per2翻訳は温度応答しないことを明らかにした。その後、化合物ライブラリスクリーニングや薬理学的な検討により、本制御機構の上流にはPKR/PERKおよびPI3Kがあること、Per2 uORFが無い遺伝子改変マウス(本研究課題で作出)では、皮膚創傷治癒速度の概日リズムが消失することを発見した。これらの結果より、Per2 uORFを介した生理的微小温度変化による生物時計調律機構は皮膚をはじめとした臓器・動物個体のホメオスタシス維持に重要であることが示された。
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