2022 Fiscal Year Research-status Report
Analysis on the function of prostacyclin synthase expressed in macrophages in inflammatory diseases
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22K15283
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
落合 翔 昭和大学, 薬学部, 助教 (20943559)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロスタグランジン / プロスタサイクリン / マクロファージ / 脂質解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、主にマクロファージ (Mf) におけるPGISの機能について解析した。まずMf分化時におけるPGISの機能について、骨髄由来Mf (BMDM) を用い検討した。野生型およびPGIS遺伝子欠損マウスから骨髄細胞を採取し、M-CSF添加によりM0細胞を作成した。さらにM0細胞をLPS +IFNγ添加によりM1細胞に、IL-4添加によりM2細胞に分化させた。リアルタイムPCR 法によりM1マーカーであるiNOS、M2マーカーであるYm-1の遺伝子発現を解析したところ、これらM1, M2マーカーの発現量にPGIS欠損による影響は見られなかった。このことから、PGISのM1, M2分化への影響は軽微であると考えられた。次にプロスタグランジン (PG) 産生酵素の発現量を検討したところ、M1細胞ではM0, M2細胞と比較し、COX-2やmPGES-1の遺伝子発現の増加が見られた。一方、M2細胞においてはPGISやCOX-1の遺伝子発現がM0, M1細胞と比較して増加していた。これらの細胞におけるPG産生をLC-MS/MSを用いて解析したところ、M0, M1, M2細胞いずれにおいても、PGE2が最も多く検出されたが、PGI2の安定代謝物である6-keto-PGF1aは最も産生量が少なかった。次に、細胞の起源によりPG産生能が異なると考え、マウス腹腔内細胞から腹腔内Mfを調製し検討に用いた。腹腔内MfでのPG産生量について検討したところ、BMDMと異なり6-keto-PGF1aが最も多く検出された。腹腔内MfにM1分化に必要なLPS +IFNγ刺激、M2分化に必要なIL-4刺激を行ったところ、M2細胞においてPGISの遺伝子発現が増加した。以上のことから、PGISはM1細胞と比較しM2細胞において多く発現し、M2細胞はM1細胞よりもPGI2産生能が高いことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は各活性化ステージにおけるマクロファージ (Mf) の機能について検討する計画であったが、当初の予定通りPGIS遺伝子欠損マウスの骨髄由来Mf (BMDM) を用い研究を進める事ができた。PGISの存在の有無によりMf分化に影響が出ると当初は予想していたが、分化時におけるPGISの影響については軽微であることが考えられた。一方で、BMDMはプロスタグランジン (PG) 類の中でPGI2の産生量が最も少なく、腹腔内MfではBMDMと異なりPGI2が最も多く検出されたことから、Mfの起源によりプロスタサイクリン (PGI2) の産生能が異なることを見出した。またM2細胞ではM0, M1細胞と比較し、PGISの発現が多く検出された。このことから、Mfの起源だけでなく、分化したMfの種類によってもPGISの発現量が異なることが考えられた。PG産生を促すことでMfでのPG産生能をさらに明確に捉えられると考え、腹腔内Mfにカルシウムイオノフォアにて刺激を行う検討も行った。腹腔内MfにM2分化に必要なIL-4刺激を行ったMfでは、未刺激のMfと比較し、PGI2安定代謝物である6-keto PGF1aの産生が増加していた。 In vivoでの検討として、予定通りザイモサン誘導腹膜炎モデルを用いた検討を行った。野生型マウスにザイモザンを腹腔内投与し6時間後の腹腔内細胞数を計測したところ、投与前の4倍程に腹腔内細胞数は増加していた。腹腔内では未刺激時、ザイモザン投与時ともにPGI2が最も産生量の多いPGとして検出された。さらに、大腸疾患におけるPGI2の機能解析のため、デキストラン硫酸ナトリウム誘導大腸炎モデルおよびアゾキシメタン誘導大腸がんモデルの作成を行っているが、現在解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症反応の抑制に関与するとされるM2細胞においてPGISが多く検出されたこと、腹腔内Mfにおいてプロスタサイクリンが多く産生されていたことから、常在性の腹腔内Mfを用いて研究を進める予定である。具体的には、リポ多糖 (LPS) 応答へのPGISの機能について解析を進める。In vitroの検討では、M1細胞, M2細胞への分化を行ったマクロファージ (Mf) にLPS刺激を行い、炎症性サイトカインやプロスタグランジン (PG) 合成酵素の発現に変化が生じるか、またPG産生量に変化が起きるか検討する予定である。 In vivoの検討ではマウス敗血症モデルとして知られる、マウスへのLPSの腹腔内投与モデルを作成し、その病態解析をPGIS遺伝子欠損マウスを用い解析する予定である。表現型として変化があった場合には、プロスタサイクリン (PGI2) の受容体であるIP受容体の作動薬あるいは拮抗薬の投与を行い、PGIS遺伝子欠損マウスに生じた病態がレスキューされるか検討する。さらに、野生型マウスにも上記薬物を投与し、病態の軽減が起こるか検討する予定である。 大腸疾患におけるPGI2の機能解析のため、デキストラン硫酸ナトリウム誘導大腸炎モデルおよびアゾキシメタン誘導大腸がんモデルを昨年度より作成しているが、大腸組織におけるPGISの発現や大腸組織に浸潤したMf等について解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
年度末開催の学会参加費や、年度末に更新のあった解析ソフト代の申請が、翌年度になってからの申請となるため、次年度使用額を残す事となった。2023年度は前年度に引き続き、実験試薬代や学会参加費、論文投稿料等、当初の予定通りに使用する予定である。
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