2023 Fiscal Year Annual Research Report
神経保護因子ニューデシンの脳梗塞における生理的意義の解明とその応用
Project/Area Number |
22K15286
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
清水 涼平 神戸薬科大学, 薬学部, 特任助教 (50908126)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / neudesin / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージの活性化を抑制し炎症反応を制御することが示唆されている分泌因子neudesinは、中枢神経系での発現が多いことから、脳梗塞発症時の傷害拡大の原因の一つであるミクログリアの活性化に対しても抑制的に働く可能性が考えられる。そこで本研究では、neudesinのミクログリアへの抑制作用および脳梗塞病態への関与について検討した。 培養細胞に対する組み替えneudesinタンパク質添加実験の結果、炎症性刺激時にミクログリアより産生される一酸化窒素 (NO) 量がneudesinの添加によって抑制された。NOは脳梗塞時に細胞傷害を引き起こす因子であることからも、neudesinが脳梗塞進展に対して抑制因子として働く可能性が示唆された。そこで、野生型 (WT) およびneudesin遺伝子欠損 (KO) マウスに対して光血栓法を用いて脳梗塞を作製したところ、WTに比しKOマウスの脳梗塞体積が有意に大きく、さらに大脳皮質全体および活性化ミクログリアにおいて、KOマウスでより誘導型NO合成酵素 (Nos2) のmRNA発現量が多いことがわかった。このことから脳梗塞発症時において、本因子は脳梗塞の抑制およびミクログリアにおけるNos2発現にそれぞれ関与していることが示唆された。さらに本因子による脳梗塞抑制機構を詳細に検討するために、梗塞作製後にNOS2阻害剤を投与したところ、遺伝子間での差が消失した。またミクログリア枯渇マウスに対しても同様に脳梗塞を作製したところ、こちらも遺伝子間での差が消失したことから、KOマウスにおける梗塞巣の拡大にはミクログリアにおけるNos2の発現制御が関与していることが示唆された。 以上より、本研究全体を通して、分泌因子neudesinがミクログリアのNos2発現の抑制を介してNOの産生を抑制することで、脳梗塞拡大に対し抑制的に働いている可能性が示唆された。
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