2022 Fiscal Year Research-status Report
腎障害におけるアドレナリンα2受容体の役割に関する研究
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22K15300
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
下川 隆臣 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (40737764)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ポドサイト / 慢性腎臓病 / ノルアドレナリン / アドレナリンα2受容体 / アドレナリンα2C受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎障害が慢性的に進行することで生じる慢性腎臓病は国民病の1つに数えられており、透析の導入数が増加の一途をたどっている。透析治療を回避するためには、腎障害を早期に改善する、または進行を抑制することが慢性腎臓病を未然に防ぐ有効な治療戦略であると想定されるが、薬物治療は対症療法しかなく未だ根本的な治療法は確立されていない。その為、現状では莫大な医療費を要する透析治療に頼らざるを得ない深刻な状況である。したがって、透析に頼らない新たな腎障害の根本的治療法の開発が強く望まれている。 申請者はこれまでに、5/6腎摘除慢性腎臓病モデルラットにおいてノルアドレナリンが過剰に放出されていること、アドレナリンα2受容体拮抗薬を投与すると、タンパク尿が抑制されたことを見出した。タンパク尿は、糸球体上皮細胞(ポドサイト)の細胞間接着装置であるスリット膜のバリア機能障害により発症すると考えられている。申請者は、ポドサイトにアドレナリンα2C受容体が発現していることを確認している。これらのことから、ポドサイトの障害にノルアドレナリン-アドレナリンα2C受容体が関与していることが考えられる。したがって、本研究では、ポドサイトに着目し、実験を行った。ポドサイトを直接障害することが報告されているピューロマイシンアミノヌクレオシド(PAN) 腎症モデルラットを用いてポドサイトの障害とノルアドレナリン-アドレナリンα2Cの関連について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PANをラットに尾静脈投与し、PAN腎症モデルラットを作製した。本モデルラットを用いて、タンパク尿の亢進とノルアドレナリンの関連について経時的に検討した。PAN投与3日後ではタンパク尿の増加はみられなかったが、PAN投与5日後からタンパク尿は増加し、10日後も持続的にタンパク尿の亢進が確認できた。次に尿中ノルアドレナリン濃度を検討したところ、PAN投与5、10日後に尿中ノルアドレナリン量の増加が確認できた。また、アドレナリンα2受容体拮抗薬をラットに飲水させると、タンパク尿の増加は抑制された。これらの結果から、PAN投与によるポドサイト障害モデルにおいてNAdはポドサイトに発現するアドレナリンα2受容体を介してタンパク尿を亢進することが示唆された。ノルアドレナリンを介したタンパク尿の発現メカニズムを詳細に解析するため、本モデルラットから糸球体を単離し、解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本モデルラットに選択的アドレナリンα2C受容体拮抗薬を投与し、腎保護効果について検討する。また、ポドサイト初代培養細胞を用いてノルアドレナリン-アドレナリンα2C受容体を介した、ポドサイトの障害メカニズムを詳細に解析する。
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