2022 Fiscal Year Research-status Report
癌細胞特異的に発現するAspHを標的とした難治性癌有効な抗癌剤シード化合物の探索
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22K15303
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中嶋 優 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (60902038)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 2OG依存性酸化酵素 / AspH / 阻害剤 / 漢方 |
Outline of Annual Research Achievements |
富山大学和漢医薬学総合研究所が有する160種類の生薬抽出液および漢方方剤抽出液のライブラリーに対して、AspH阻害活性試験を実施した。構築したアッセイ系は、AspHが酵素反応中に放出するコハク酸を検出することに基づいており、試料中にAspH阻害剤が存在する場合に低下するコハク酸の生成量の検出を目的とする。まず、基質であるEGFD1、共基質である2OGおよび補因子である鉄イオンとアスコルビン酸を使用し、AspHに対する一次反応を実施した。次に、この反応生成物であるコハク酸を、ATPおよびCoAの存在下でSuccinyl-CoA Synthetase(SCS)によってSuccinyl-CoAに変換する二次反応を実施した。最後に、Malachite Green Phosphate Assay Kitを使用して、この反応で放出されたモノリン酸を検出する三次反応を実施した。この反応は、96ウェルプレートを使用した簡易的なスクリーニングに適しており、620 nmの吸光測定によるモノリン酸濃度依存的な検出が可能である。また、EGFD1は最低限のアミノ酸配列から構成される39残基のペプチドとして調製され、異種大腸菌にて大量発現および多段階精製によって高純度化した。同様に、AspHおよびSCSも異種大腸菌にて高純度化した。スクリーニングに使用する各抽出液は1 mg/ml、0.01 mg/ml、0.0001 mg/mlの異なる濃度で評価した。N-oxalylglycine(NOG)はAspHを含めた2OG依存性酸化酵素の共通阻害剤であるため、コントロールとしてNOGを100μMの濃度で使用した。結果として、ビャクシやブクリョウといった生薬、そして人参養栄湯といった漢方方剤抽出液が、濃度によってAspHの阻害活性を示すことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度において、本実験のAspH阻害活性試験に使用するアッセイ系の構築に時間を要する形となった。具体的には、活性試験を行うために必要なヒト由来AspHの異種大腸菌における発現方法、基質となるEGFD1の調整方法、そしてアッセイ系の評価方法に多くの検討が必要であった。これらを安定的に実施可能な状況にするために、9ヶ月を費やした。そのため、本来実施予定であった研究代表者が有するミャンマーやベトナムで採集した薬用植物や海綿天然資源(ミャンマー産植物120種類,ミャンマー産海綿15種,ベトナム産植物47種,ベトナム産海綿35種)のスクリーニングは実施できなかった。一方で、富山大学和漢医薬学総合研究所が有する160種類の生薬抽出液および漢方方剤抽出液のライブラリーを用いて、ビャクシやブクリョウなどの生薬、および人参養栄湯などの漢方方剤抽出液が、濃度依存的にAspHの阻害活性を示すことが判明した。しかし、その天然阻害物質の特定には至っておらず、現在、見出した生薬および漢方方剤抽出液からの単離・精製試験を進めている。 また、研究代表者が所属する富山大学和漢医薬学総合研究所の改装工事に伴い、7-9月および3月の実験が中断されていたことも研究進捗の遅れに大きく影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の課題であったスクリーニング系の構築は、既に対策済みである。実際に、構築したスクリーニング系により、160種類の生薬抽出液および漢方方剤抽出液のライブラリーを利用して、阻害活性物質を含む生薬および漢方方剤を特定することに成功している。今後は、阻害活性物質の単離・精製試験を進めるとともに、ミャンマーやベトナムで採取した薬用植物や海綿天然資源に対してスクリーニングを行い、さらなる阻害活性物質の探索を続ける。また、単離した阻害活性化合物に対して、細胞毒性試験やX線結晶構造解析を利用したAspHの阻害活性機構を解明する。X線結晶構造解析には高純度な酵素が必要であるが、すでに異種大腸菌による発現および多段階精製により95%以上の純度で取得済みであり、問題なく実施可能であると考えている。
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Causes of Carryover |
また、研究代表者が所属する富山大学和漢医薬学総合研究所の改装工事に伴い、7月から9月までおよび3月の実験が中断されていたため、次年度使用額が生じた。なお、次年度使用額である79,359円はすべて物品費の購入に使用予定である。
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