2022 Fiscal Year Research-status Report
フレイルの克服を目的とした、大棗から見出したアミノ酸脱炭酸物がもつ生理機能の解明
Project/Area Number |
22K15308
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
白子 紗希 立命館大学, 生命科学部, 助教 (60875889)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大棗 / アミノ酸脱炭酸物 / LC-MS/MS / グレリン / 漢方薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生薬の大棗から見出した“アミノ酸脱炭酸物”に着目して、その生理機能および薬効への寄与を明らかにすることを目的とした。加齢に伴って心身が衰えることで、要介護状態になる可能性が高い段階をフレイルという。フレイルの要因として、加齢による消化管機能の低下、食欲不振、低栄養状態などが挙げられる。これらは負の連鎖をもたらし、フレイルから要介護状態へと進行する。そこで健康寿命の延伸のためには、高齢者のフレイル対策が社会的課題であると考えた。一方、食品科学分野においては、摂取したタンパク質が小腸でアミノ酸へと消化されるが「一部は小腸や血中での消化を受けず、標的組織に作用して生理機能をもたらす」ことが示されている。これらの“小腸や血中での消化を受けない成分≒生理機能を発揮する成分”の探索のために、exopeptidaseなどの人工消化液を用いたin vitro試験が行われてきた。この技術を初めて生薬に応用し、人工消化液で消化されない成分として、大棗においてのみ存在する“アミノ酸脱炭酸物”を見出した。本研究ではこのアミノ酸脱炭酸物に着目し、摂食亢進と消化管機能改善の両面から、フレイルに対する大棗の有効性を明らかにしたいと考えた。 今年度は、大棗およびアミノ酸脱炭酸物の標的組織を決定することを目的として実施した。大棗水溶性画分をラットに経口投与し、生体内(血中および胃や脳など)への移行性を確認した。その結果、動物実験の精度を高める必要性があるが、大棗を投与したラットの脳において、アミノ酸脱炭酸物が増加する傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大棗の投与により、ラットの脳内でアミノ酸脱炭酸物が増加する可能性が見られたことから、初年度実施計画の「標的組織の決定」についてはおおむね順調に進んでいると考える。 大棗の投与濃度の再検討および動物実験の再試験を行うことができれば、初年度実験計画Ⅱ「食欲不振モデルラットの最適化」について進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
大棗を投与したラットの脳において、アミノ酸脱炭酸物が増加する傾向が見られたことから、再試験を行い、大棗および大棗由来のアミノ酸脱炭酸物の標的組織が脳であることを確認したい。 その後、シスプラチンによる食欲不振モデルラットを用いた実験を最適化する。そして、大棗による摂食亢進作用への影響を検討し、大棗の摂食関連作用にアミノ酸脱炭酸物が関わっているのかについても調べたい。
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Causes of Carryover |
当該研究に関わる学会発表、論文校閲および投稿費の支払い等がなかったため、次年度に一部繰り越した。次年度は発表可能な研究成果を得るためにも、ラットへの投与試験の再試験を行ったうえで、食欲不振モデルラットを用いた実験を行いたい。
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