2022 Fiscal Year Research-status Report
シスプラチン起因性腎障害のさらなるマネジメント戦略の考案
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22K15310
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 佳敬 北海道大学, 大学病院, 薬剤師 (00835001)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シスプラチン / 糖尿病 / 腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では糖尿病合併患者におけるシスプラチン(CDDP)起因性腎障害(CIN)の出現に関して検討を進めている。本研究遂行の根拠となった我々の前検討では糖尿病の合併がCIN出現のリスク因子として副次的に抽出されたのみで検出力不足が問題であったことから、まず糖尿病患者においてCINが有意に高頻度で出現するかを主評価項目として臨床研究を実施した。 75 mg/m2以上のCDDPを含むレジメンを投与された肺がん患者227名を対象とした。CDDP投与開始時点で薬物療法を要する糖尿病合併患者群(37名)と糖尿病を有さないコントロール群(190名)間でCINの出現頻度を比較した。CINは以前の検討と同様にCTCAE v.5.0におけるグレード2以上の血清クレアチニン上昇と定義した。さらに傾向スコア分析を用いて患者背景を調整した患者群間でも同様の検討を実施した。 その結果、CINの出現率はコントロール群では6.8%、糖尿病合併群では27.0%であり、糖尿病の合併が有意にCINの出現率を上昇することが示された(P=0.001)。また、クレアチニンクリアランスの低下割合も糖尿病合併群で有意に大きいことが示された(P=0.04)。傾向スコア分析により患者背景のバランスをとった患者群においても同様の結果が得られた。 また、ロジスティック解析を用いた多変量解析でも糖尿病の合併がCIN発症の有意なリスク因子として抽出された(オッズ比4.31、95%信頼区間1.62-11.50、 P=0.003)。 基礎研究では正常ラット腎細胞株であるNRK-52E細胞を用いて高グルコース培地(D-グルコース25 mM)と通常グルコース培地(D-グルコース 5.5 mM)下でのCDDP添加による細胞生存率を検討したが、両条件下での生存率に差は認められず、高血糖自体がCIN悪化に直接関与しないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定通りに進捗している。多施設共同研究も目標必要症例数150例のうち120例が集積できている。基礎研究もpreliminaryな検討が順調に経過している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は糖尿病の合併ならびに糖尿病薬の併用がCINにどのような影響を与えるかについてin vitro,in vivoで検討予定である。抗酸化物質がCINに与える影響については現在in vitroで検討中であり,薬剤のスクリーニング後に糖尿病の結果と併せて検討を進める予定である。 臨床研究は2023年度中には解析終了ならびに論文投稿が可能と考えられる。
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