2023 Fiscal Year Research-status Report
持続血液濾過透析による吸着クリアランスを考慮した抗菌薬投与設計の構築
Project/Area Number |
22K15314
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山崎 伸吾 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (60921765)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 薬物吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症は集学的治療を行なわないと数時間で死に至るため、救命には迅速かつ最適な感染症治療が必須である。しかし、これらの抗菌薬は、腎機能補助と炎症性サイトカイン除去を目的として敗血症患者に導入される持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)により効率的に除去されてしまう。そのメカニズムはCHDFヘモフィルターによる濾過・透析・吸着のいずれかだが、吸着で除去される薬物の投与設計指標は存在しない。本研究ではヘモフィルターへの薬物吸着を定量的に組み込んだ新たな抗菌薬の投与設計の構築を目的とする。 R4年度に検討したバンコマイシンやテイコプラニンはタンパク結合率の異なる抗MRSA薬であったが、R5年度は赤血球移行性の高いガンシクロビル(GCV) を対象とした。3種類のCHDFヘモフィルター (AN69ST、PMMA及びPS) を用いて血液浄化条件別のクリアランスおよび吸着能についてin vitro実験を行った。GCVのクリアランスは排液流量(Qe)依存的に増加し、いずれのヘモフィルターにおいてもほぼ同等(Qe=800mL/minで0.83L/h、Qe=1500mL/minで1.58L/h、Qe=3000mL/minで3.01L/h)であった。GCVのクリアランスにおける濾過透析および吸着の寄与度はいずれの膜においても1.4~6.7%の範囲であった。 また、いずれの検討においても血清アルブミン濃度を0g/dLと5g/dLの2濃度を設定して実験したが、いずれも差がなかった。これらの結果から、AN69ST、PMMA及びPSを用いたCHDF施行中におけるGCVのクリアランスはQeに依存しヘモフィルターへの薬物吸着の影響は少ないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床業務の増大によりin vitro実験が進んでいない。また、対象となる患者が減少しており、in vivoでのデータ蓄積が遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も薬物吸着を定量的に組み込んだ新たな投与設計の構築を目指し、検討を進める。R4年度の調査の中においてTEICの薬物吸着機構の詳細は不明であることが明らかとなったため、吸着機構の解明も検討を進めたい。また、GCVの赤血球移行性に関する検討を進め、ヘモフィルタークリアランスに与える影響に関する情報を創出していく。 情報収集に向けた臨床薬学関連の国際および国内学会が参加可能となり始めた。他の研究者から直接の議論や情報収集にも積極的に取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
対象症例の減少と赤血球を用いた実験の遅れから実験計画を変更し対応する。
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